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『コズモポリス』 車内の小宇宙、車外のカタストロフ - 1953ColdSummer

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『コズモポリス』 車内の小宇宙、車外のカタストロフ


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コズモポリス
COSMOPOLIS
2013/フランス/カナダ/R15+ 監督:デヴィッド・クローネンバーグ 出演:ロバート・パティンソン/他 原作:ドン・デリーロ 『コズモポリス』


 殻、というものが嫌いだ。蟹を食するには殻を剥くなんてえ手間をかけないといけないし、そもそも殻を持つ生き物があまり好きではないし、「自分の殻に閉じ籠る」つう言い様もポジティブな意味では使われぬ。殻。それを嫌いすぎるあまり一度などは抗議の割腹自殺にて果てようかとも思ったのだけども、臓腑がぼどぼど出てくると何かそれも殻を剥いた後の何らかが連想されて嫌であるし、殻なぞに庇護されて惰生を貪る低級生物のために死ぬるのはひととして、にんげんとして、少しく間違っていると思い直し、息子のブランドンも映画監督デビューして何かと花柳界を騒がせたるクローネンバーグの『コズモポリス』を観に行ったのであるが、かかる作品を観てわたしは、あっ、と声を上げ、顔面蒼白になると、産まれたての子鹿の如きに脚を震わせてしまったのである。

 エリック・パッカーちゅう資本家は金持ちで、むしろ金を持っていない資本家が居たら教えてもらいたいものだが、兎角、指を動かせば大金が動くし、顎をしゃくれば人がビルから飛ぶのである。
 ほで、関東炊きをふうふう食しておる乃公からしてみればその金満なる資本力だけでもじゅうぶん恐ろしいのであるが、尚恐ろしい事に、このエリック・パッカーさんは殻でワガを装甲しておるのである。とは言い条、それは強殖装甲でも亀仙人の甲羅でもなく、実はこの人、常にリムジンに乗っており、その中で指揮、決済、分析、睡眠、食事、生殖、排泄などをすべて行なえるようになっていて、更にはこの移動式オフィスで散髪屋に行ったりも出来、他人と乗り合わせれば思弁的(哲学的、とは言わない)な会話を交わせる。板金1枚隔てた外界は文字通りフィルタリングされ、憂き世から緩衝されておったエリック・パッカーさんなのであるが、ある日、人民元の相場を見誤った事から破滅へと歩んでいく事となるのであります。

 2003年に上梓された原作は、後々のリーマン・ショックや反格差デモを予見していたものとして、再評価の機運も高まり、つうか映画化されているのだから再評価されているのだろうが、実体経済のみならず資産経済の薄氷をも鋭く指摘しているものとして、またそれを観念的に昇華し、金という俗臭芬々たる現実を文芸に仕上げた傑作であり、多くの人間がこれを読んで「よく分からない」と首を百八十度ほど捻ったと聞く。
 妻との上手く行かない関係や、市場の相場を把握している割にはどこか地に足の着いていないその言動は『ソーシャル・ネットワーク』(自分の感想はこちら)のマーク・ザッカーバーグを想起させないでもないのだけども、金融商品を取り扱う者としての先天的なセンスって言うのかな資本主義の犬っぷりって言うのかな、そんな野獣性がたまに、ちら、と見えたりして、それが緩慢な自死、死の概念に繋がっていく。

 本作の白いリムジンを子宮と見做し、子宮から出たる以上はやがて死に向かう、つう見立てを読み取るのは容易である。それは胎内回帰願望とは違いますのン? 正確には、クローネンバーグの臓腑フェチの先鋭と見れば得心が行こうというもの。メタリック、SFテイストな子宮、それが本作に於けるリムジンで、これがクラッシュするたびにエリック・パッカーさんがオルガズムに達してくれれば『クラッシュ』と2粒楽しめて面白いのだがそんな個人的願望はさて置いて、リムジン内で弄り回していた数字が結局虚数と化し、車内で行なった会話は空疎なもので、リムジンから降りて、無力を自覚しながら死に向かって行く、段々に肉体性を帯びて。つうのはどこかで目にした文脈である事よ、と思い出したるは『しんぼる』で、これはまだ即物的ではあったものの、脳内のシナプスが何故か本作と関連付けようとするのである。

 さんざ観念めいた話をしたところで、本作には人体破壊描写もあるという事も言上しておきたい。人体破壊とは言い条、パイを顔にぶつけられたり、髪の毛を半分だけ刈ったりといった可愛らしいものから、実弾を用いたものまで取り揃えてあって、しかしこれがまた寓喩的解釈を仄めかすようなもので、ラストシーンひとつ採ってみても解釈に費やす言葉は膨大なものとなる事が予想できる。
 ……と、ここまで書いてみて家という殻の中で映画に対してカタカタとキーボードを叩く自分の姿が、どこか寒気を帯びて客観視されたのだけども。


コズモポリス (新潮文庫)コズモポリス (新潮文庫)
ドン デリーロ Don DeLillo

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