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『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』 わたしは、あるものの中にこの物語を視た - 1953ColdSummer

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『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』 わたしは、あるものの中にこの物語を視た

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ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日
LIFE OF PI
2013/アメリカ/G 監督:アン・リー 出演:スラージ・シャルマ/イルファン・カーン/他 原作:ヤン・マーテル 『パイの物語』


 シネ・コンで映画を鑑賞し臈たしくした後は、行きつけのラーメン屋に参り世界の帝王のような顔をしてこれ精力的なラーメンを注文、ちゅらちゅら、ずびびっ、と啜りつつ、いやあ、良い映画でした。と、ワッパのような感想以て脳内で反芻したり、中華蕎麦のあまりの旨さにさっき観た映画のことなど忘れ呆けて餓鬼と化したり、食い終わっても店に置いてある中華一番を読み続けるなどしてちらちら刺さる視線を受けるなどし、フィクションから現実へと帰還する手立てに凝っておる。

 で、『アバター』をぴょこんと超えたであるとか、その宗教的解釈が頭脳を刺激するとか、美しすぎて失禁したであるとか、称賛の言辞もて囃されている『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』を重い腰を上げて観に行った。うんうん頷いてふむふむ納得し、やっぱりどうぶつは可愛いなぁ。さあラーメン食って帰るか。と行きつけのラーメン屋に訪れたるとき、それは起こった。

 奥まった座席に腰を掛け注文をし、やがて運ばれてきたラーメンを見、わたしは、ううっ、或いは、ああっ、と唸った。
 その器の中には、先程観てきた、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』が再現されておったのである。

 スープが海水であることは容易にお察しいただけるだろう。『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』は、パイ少年がベンガル虎と非常用ボートで漂流した日々を描く映画だ。つまり、どんぶりの中にはパイ少年が漂流した海が再現されておるということで、物語の途中、神の見えざる手により飲料水や保存食の詰まった缶々がぼとぼと海に落ちてしまうシーンがあるが、このシーンがラー油、大蒜などをスープに落とす行為と二重(だぶ)って視えるのは、決して偶然ではなく、一種の箱庭めいた世界、どんぶりの中に、パイ少年と虎畜生の漂流する世界が再構築されている。

 そもそもが哲学的、宗教色の修辞をして、寓意めかされたお話なのである。
 リチャード・パーカーというのは一緒に漂流するこことなり申したベンガル虎の名前だが、この虎はパイ少年の野生との葛藤の暗喩であるとか、現世と幽世のイコンであるとか、ちょっと小賢しげな意見が談論風発、この虎は男根の象徴である、といった、おめえ映画観てねえだろ、と言いたくなるが如き極論まで言上されておる。

 わたしは、このベンガル虎、リチャード・パーカーは、チャーシュウであったのだと思う。
 と同時に、幾つもの宗教や哲学をサバイバルの中から混淆させてゆくパイ少年は、麺であったのだと表明する。

 虎への恐怖は征服感の裏返しであり、これ即ちチャーシュウをどのタイミングで喰らったろかしらん、というある種の調教を意味し、筏で虎と距離をとるパイ少年の姿はチャーシュウをどかして麺を掬うそれであり、箸使いは、パイ少年が虎を突っつくのに使っていた棒とオーバーラップする。最初に乗り合わせていたシマウマ、オラウータン、ハイエナなどはもう面倒臭いからキャベツ、シナチク、ネギのメタファであるとする。被食物であったのだからこれらの暗喩で構うまい。先ほどから暗喩だのメタファだの同じ事を日本語と英語で交互に繰り返していてアレだが、これらの便利なことば無くして本作を語るのは、自宅で具の入っていない袋ラーメンをちょぼちょぼ啜るが如しである。

 途中でパイ少年と虎畜生は人喰い島にたどり着き、ミーアキャットの大群と遭遇する。これが顔のない民衆、つまるところのラーメン屋の自分以外の客を暗に示しておることを見逃す乃公ではない。時間が経つと酸化する湖は古い食用油であり、島に喰われた先人の歯は、店が食中毒を出した経緯があることの隠喩であると乃公は睨む。

 やがて、麺も少なくなってきたところでチャーシュウは喰われる。咀嚼され、嚥下する。
 チャーシュウは虎であると先に書いた。麺がほぐれ少なくなってきたとき、もしくは麺を啜り終えたとき、チャーシュウはまたどんぶりの中から姿を消す。何を申されるか、私は真っ先にちゃーしゅうを食む、と言いたい向きもあるかも知れない。それはそれで、虎が居ない物語、作中にふたつ提示される物語の選択のエクリチュールとも言え、振り向くことなく去っていった者への決別、忘却じみた考え方もできる。

 わたしはラーメンを食し、スープをすべて飲み干すと箸を置いた。『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』という観念上のラーメンを身体に取り入れたのだ。

 ……などと適当なことを書いてみたが、その適当さであっても一種の正当性を与えうるのが本作の寓意であり、地肩の強さだ。本格的な、ガチンコな解釈は他にいくらでもあるので、わたしはラーメンを例に本作を箱庭として俯瞰してみた。暗喩の多さと自由度はかくも柔軟な観方を与えてくれ、極端な話が、成人となったパイがカナダ人ライターに騙った話がぜんぶ嘘っぱちだった、という論陣の張り方ですら許容してくれるだろう。映画に見るフリーシナリオ。この選択肢の多さは、ちょっくら魅力的ではないですか。


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