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『かぞくのくに』 あなたも、あの国も大っ嫌い! - 1953ColdSummer

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『かぞくのくに』 あなたも、あの国も大っ嫌い!


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かぞくのくに
2012/日本 G 監督:梁英姫(ヤン・ヨンヒ) 出演:安藤サクラ 井浦新 ヤン・イクチュン 他 原作:ヤン・ヨンヒ 『兄~かぞくのくに 』


 寝起きの脳味噌に活を入れるべくして、コーヒー粉を湯に溶かし、ミルクとシュガーをぼどぼど入れると出来上がる極めてスリリングな飲み物を、ずずっ、ずずずっ、つて啜ってみれば当然これ阿呆のように甘く、頬を上気させて甘~い、もしくはSWEET♡、てくねくねしながら言っておると、脳味噌に活、と言うか、脳味噌が溶ける、ような気がして、何やら平仄の合わぬ心持ちになるのだが、それが毎朝の習慣であり、カフェインの余勢を駆って家を飛び出しているものだからして、このまやかされた心持ちのまま、プロレタリアとして社会の歯車としてぐるぐる回りくさっていると終いにゃあ何も見えんくなって、気付けば幽冥の境を超えていた、横たわる自分の姿を天井から眺めていた、なんてことはままある。

 が、ままある、ときどき、しばしば、ある。で済んでいるところが良くも悪くも我が朝の特色で、それが常態化、労働者と餓死者の区別も付かなくなり、毎朝ずずずず一杯のコーヒーを飲む、という行為がとんでもねえ贅沢であるという国もあって、今回ご紹介したい『かぞくのくに』なる映画では、「その国」から来た監視員が、コーヒーにミルクとシュガーをぼどぼどぼどぼどと入れるシーンが一見コミカルに描かれておるのだが、それは「その国」ではミルクもシュガーもとんでもねえ贅沢品である、という事情を言外に説明しているということで、我が朝ポンニツと「その国」との断絶に、国籍の迷い子たる面々が如何に涕泣したか、とでも言いたげな気鬱なエモーショナルがある。

 北朝鮮は地上の楽園でございまするよと喧伝され30年以上に渡って行なわれた在日朝鮮人の帰国事業。理想の国であると信じ込んで足を踏み入れてみたらば死体は転がっているし犬は痩せ細っているし。じゃあ黙って半回転して日本にまかり戻ろう。え? 片道切符?(と言った直後にヒュウウっと冷たい風が吹く) てな具合に現実は得てして笑えないコントのようなもので、しゃあないので、いや「しゃあない」と思う余裕も無かった、ということが劇中の「楽だぞ、思考停止」という台詞一言でぴしゃりと言い表されているのがこれまた気鬱なエモーショナルなのでございますが、人間らしい思考を止め、ロボット、木偶のように「もう嫌々」と感じることすらなく北朝鮮を祖国と刷り込まねばならなかった、ARATA改め井浦新が演じる病の治療のため北から3ヶ月だけ出戻りを許された青年ソンホが、在日の家族のもとに25年ぶりに戻ってきたというお話。

 寡聞にして存じあげませなんだがこれは本作の監督であり原作者、ヤン・ヨンヒの実体験に基づく話であるらしく、が故に随所にリアリティを凝らそうと目論んだ様子が窺える。ソンホがオモニ(母親)と再開するシーンの、手持ちカメラによるざらついた長回し。政治単位ではなく生活単位でしこしこ積み重ねられるぎこちなさと違和感。そして、そしてですよ。例えばの話ですよ。本当に打診があったのではないのかと思われる、家族へのスパイ、工作員になってみないかという要請。現代日本と北朝鮮との断絶が、そのままソンホとその妹、安藤サクラ演じるリエとの関係に半ば投影されているのは皮肉である。が、リエは理解に努め、来日してどこか不安を覚えている兄を許容ないし率先しようとする。で、上記のスパイ要請で、こう、関係が、パリーン! とね。

 所々に流用される団欒の様子や人間交流なぞははっきり言って見飽きたかたちのものだとは申し上げまするが、上奏する前にはたと一抹の不安が胸にかき曇り、ラーイツこれはカモフラージュされた導火線の如きものなのではないかと。導火線に火が点くとどうなるか。燃える。燃え進む。火心に到着する。BOMB!! 勝鬨橋を闊歩するような気分になり、爆発の瞬間を待ち構えておったらばほら来たそら来た。
「あなたも、あの国も大っ嫌い!」
 これは、工作員になってみないかとソンホに切り出されたリエが噴火したる後、北から来た監視員であるヤン同志、『息もできない』(自分の感想はこちら)の監督兼主演のヤン・イクチュンです、に向かって絶叫する台詞なのであるが、この返答に本作の核心を持ってきた脚本に、くわわっ、と眉間のチャクラが開いた。

「あの国で、私もあなたのお兄さんも生きているんです」

 以降、無口でどこかおどおどしていたソンホが神経症を患ったかのよう多動を繰り返し、能動的にリエに話しかけるようになり、「色々な国へ旅をしてみろ」と説法をする。するようになります。そこには北朝鮮の横暴/狼藉が透けて見えるかのようなある理不尽な理由があるのだが、その理由たる理由を知らしめるシーンでヤン同志が日本製のアダルトビデオしかもSMモノを観ていたのにも暗示的なものを感じる。ものは言い様です。

『かぞくのくに』という平仮名表記には国籍を超える、という意味合いが込められているらしい。国籍は変わってしまったけど兄ソンホも妹リエも、監視員ヤンにだってそれぞれの事情があり懊悩がある。じゃあどうするか? 恐らく、できることは殆ど無い。「あなたも、あのくにもだいきらい」という台詞を(映画内に於いてですら)言うのに40年以上かかっているのに、あと40年生きられるかどうかすら定かでない人の子に何ができようか。本作で描写されている通り、生活単位ですら我々の視野はぎりぎりなのである。そんな中、リエの「私、韓国には入れないの」というような政治的な事情をさらりと口にせねばならぬのだから、その苦労たるや。ああコーヒーの味が苦み走ってきた。


兄~かぞくのくに兄~かぞくのくに
ヤン ヨンヒ

ディア・ピョンヤン―家族は離れたらアカンのや 北朝鮮で兄(オッパ)は死んだ トガニ: 幼き瞳の告発 東京プリズン K

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