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『ミッドナイト・イン・パリ』 真夜中の魔法で黄金時代へと - 1953ColdSummer

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『ミッドナイト・イン・パリ』 真夜中の魔法で黄金時代へと


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ミッドナイト・イン・パリ
MIDNIGHT IN PARIS
2012/スペイン/アメリカ G 監督・脚本:ウディ・アレン 


 旅先で魔法にかかるというのはままあることで、それが異国情緒豊かなところであれば尚更のこと。乃公などは、異国っていうか、割と近所の、健康ランドのマッサージ椅子に座っただけでも、「ぽえ~極楽々々」などという滔々とした言葉が口をついて出て来、これもまた一種の魔法にかかった状態とも言えるのであるが、かように出かけるたびに魔法にかかっておると、はな、もしも本当に外国に行った折には、本場の魔法によりどのような無茶ら苦茶らな状態になってしまうのか予測も付かぬ上、それがもし、屁をひりながら奇怪な舞踊を踊らされる呪術のたぐいであったら嫌だなぁ、痩せゆく男にされたら嫌だなぁ、と心配性が胸をざわめかし、旅先で魔法にかかってしまった例として、おそ松くんの、仏蘭西帰りであるイヤミという男、その髪型、ひげ、出っ歯、なんか紫色をしたスーツ、「シェー!」という例のポーズ、などを思い浮かべてしまうのである。

『ミッドナイト・イン・パリ』は、仏蘭西は花の都巴里で魔法にかけられてしまった男のファンタジーである。とは言い条、驚くたびに「シェー!」というポーズを取ってしまうような魔法にかけられたわけではなく、真夜中、1920年代の著名人たちを乗せたクラシック・カーが迎えに来、案内されるは黄金時代の知識人たちの社交場……という、邪智の無い優しい物語であって、真夜中に迎えに来るのが炎をまとった片輪車や、首から上が無い騎士が乗った馬車でないことからも、本作の優雅、典雅、といったものは理解していただけると思う。

 主人公ギルは婚約者と共に、よっしゃ、一丁、フランスで行楽でもこましたろか、はは。とパリに降り立ったのであるが、どうも観光をしていてもぎくしゃくする、おまけに婚約者の知己であるという男が出現、これが歴史や芸術のトリビアというかガセビアというか間違った薀蓄ばかりを披露する、しかも言い張るという七面倒臭い男で、何だかもう嫌になったギルは真夜中にひとり街をぶらつく。そしたらば時計台が0時の鐘を鳴らし、黄色い古いプジョーがやって来て……。

 冒頭、すわ、観光誘致かっ、と、お尻の辺りをうずうずさせてしまいそうなパリ名所巡りのスライドがまず美しい。本作はシニシズムに根差した視点もあるにはあるのだが、この冒頭のスライドは作意されたものではなく、ただあるだけ、観るだけで美しい。ヴェルサイユ、エッフェル塔、セーヌ川など世界的に有名な場所が次から次へ、右から左へと本作ではぽんぽん出てくるのであるが、こうしたある種の磁場、場所自体が持つ「力」とでも言うべきものがあるからこそ、主人公ギルの内面の鬱屈、映画の脚本家という仕事に就きながらもそれを物足りぬと思い、憂さを晴らしにパリに来たものの、婚約者と上手く行かず、次第にパリの街に囚われゆく……という対比を描くに成功しておる。美しい世界と物足りぬ個人。俗物的な商業脚本書きから自然とパリの恋人へと変貌してゆくその様は、普遍性を帯びたものであり、愚人の習いと一様に切り捨てられるものではない。

 鬱屈を抱えたまま1920年代にタイムスリップしたギルは、ヘミングウェイ、ピカソ、ポーターなどの「マイ偉人」と邂逅を果たし、精神浄化、カタルシスを得るというか、いい歳をした少年に精神が退行してしまい、現世(現世?)での憂さを忘れ、至高のひとときを過ごす。だが、少しく待っていただきたい。例えば、乃公なども、マンホールに嵌るか箪笥の角に足の小指をぶつけるかしてタイムスリップを果たし、江戸川乱歩や三島由紀夫、絵師金蔵に力道山光浩に出会ってしまった場合、間違いなくいい歳をした少年に精神が退行してしまい、現世(現世?)での憂さを忘れ、至高のひとときを過ごすのに違いないのであって、彼を責めることはできないな。できないね。だって彼の浮かれっぷりを観て御覧よ。そして婚約者からの呆れられ具合を観て御覧よ。ここに、婚約者との噛み合わなさがあって、パリへの憧憬がある。C'est superbe que l'essence de l'homme!! 本質がある!

 過日、フランスでの話を色々聞かせていただく機会に恵まれたのであるが、場所、舞台、背景としてのパリは本当に美しいと感じた。ただ、そこには人間が居って、人間が居る以上生活というものがあって、生活を分解すると個人という単位になるのであるからして、個人々々の事情や快楽、鬱屈があることから目を背けてはいけない。生活に倦んでパリに救いを求めた男を否定してはいけない。ということで、わたしはこの映画はハッピーエンドだと思いますね。当然なる帰結だと思いますね。救いを求めたら救われた。日常の草臥から解放された。少なくとも紫のスーツを着て「シェー!」などというような人間にはならなかった。こうした事象を指して、珠玉と言うのですね。


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