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醸成されつつあるは血と暴力と犯罪の匂い 『ドライヴ』 - 1953ColdSummer

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醸成されつつあるは血と暴力と犯罪の匂い 『ドライヴ』


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ドライヴ
DRIVE
2012/アメリカ R15+ 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン 主演:ライアン・ゴズリング 原作:ジェイムズ・サリス 『ドライヴ』


 前評判も非常に高く、観た方面からは柏手で絶賛の嵐。魚河岸のボンも、能吏風のサラリーマンも、Twitterで繋がっておる海のものとも山のものともつかない古怪じみた映画マニアたちも、はは、均しくこの映画を誉めそやしておる様子は、情緒纒綿、喝采々々の多重奏の如き様子を呈しておる。曰く、「2012年ベスト1」。曰く、「ゴズりんに抱かれたい」。たはっ、それらの賛辞にわなないてしまったね、わたしは。わなないた以上、走るでしょう。走って『ドライヴ』を観に行くでしょう。そうしてひらひらとシネコンにたどり着いたわたしは、阿呆のような顔をして、『ドライヴ』のチケットをこれ購入、そして売り場でパンフレットを頭に乗せて遊ぶなどしておる内に上映時間と相成って、指定席にどっかと腰を据えたのである。

 昼は映画のカー・スタントマン、夜は強盗の逃がし屋を請け負って糊口を凌いでおる主人公、“ドライバー”は、同じアパートに住む人妻アイリーンと偶然エレベータに乗り合わせたことから、一目で恋に落ちる。しかし、彼女の夫が刑務所から出所してきたことにより、血と暴力と犯罪の匂いが色濃く周囲に立ち込めてきたのであった。

 台詞や説明が非常に刈り込まれており、主人公“ドライバー”も含め徹底的に寡黙な映画であるので、自然と、雰囲気を味わうかたちになる。そこに求められるは、文弱柔弱の盆暗観客ではなく、映画検定に於いて甲種合格間違いなしの、雰囲気と空気を読むに長けた当代一流の映画見であり、理想主義に身を投げた脱俗の徒である。「色男金と力は無かりけり」なーんてことを言った人があるが、確かに、まあ、何と言うか、本作のライアン・ゴズリング演じる“ドライバー”は、金は持ってなさそうなのであるが、力に関しては、これ、人間をハンマーで殴り殺さんとしたり、これ、人間の頭を蹴り潰したり、と、同じ「力」であっても財力でも権力でもなく暴力を以てして映画内世界とコミットを図る様子は、本作に高い期待を寄せ、静謐と暴力の対称的な混淆に酔った当代一流の映画見たちに、深い感銘を与えうることが出来たのであろうと推察する。

 で、わたしは、当代一流の映画見でも、理想主義に身を投げた脱俗の徒でもないので、本作に関しては、「ふーん」という感想しか抱けなかったのであって、寡黙である本作にちなんで、「ふーん」の一言で寡黙に感想を終わらそうかとも思っていたのであるが、そのような手抜き・足抜きをしておっては先に述べた超俗的/高踏的な映画ファンたちにどつき回され、簀巻きにされてインターネットから追放され警職法も何のその、未来永劫映画の感想を述べることを禁遏されそうであるので、顔で笑って心で泣いて、ついでに屁のひとつもひって、頑張って感想を書こうと思う次第。はは、蜘蛛の糸にぶら下がった犍陀多の如き気持ちであるよ。

 まず、この映画の監督であるレフンという人は、ケネス・アンガー『スコピオ・ライジング』にオマージュを捧げておるらしく、その証左として“ドライバー”が着用する銀のスカジャンの背中にはでっかいサソリの刺繍が成されており、また、主人公に名前が無いのは、クリント・イーストウッドの西部劇の主人公である「名無しの男」からの引用だという説もある。かと思えば、本作の人妻アイリーンを演じるキャリー・マリガンは「私とライアン・ゴズリングが見つめ合っているシーンばっかり」と愚痴を垂れ、それらを総括すると、要するに本作を楽しむには空気を読め、雰囲気を味わえ、という地点に着地する。それを見抜いてしまうのはわたしがインテリであるから仕方ないとして、雰囲気映画と聞いて『SOMEWHERE』(自分の感想はこちら)のソフィア・コッポラのしたり顔しか思い浮かばないのはわたしが莫迦であるからして仕方がない。

 本作をデヴィッド・リンチの映画のようだと評する声も聞こえる。これは中々に鋭い指摘だと思うが、雰囲気映画とは言い条、リンチの名前をこうして安売りされると、海鮮丼をぶちまけて軍艦マーチを絶唱したくなるような気分になり、でも海鮮丼をぶちまけて軍艦マーチを絶唱すると変な人だと思われて社会生活に支障をきたすような気もしないではないので、ぎりぎりと奥歯を噛んで本作をリンチになぞらえるその御座興に、ただただ耐えなければならない。ムードを醸成していく過程がリンチ映画に似ておるというのは最もだが、リンチはムードで作品の輪郭をぼやかし、本作『ドライヴ』は、ムードで即物的な暴力の効果を高めておるのだ。このふたつは相反するものであるとは言っておきたい。

 暴力的でありながら、暴力以外が抑制されておるがために主権がどこにあるのか分かり辛くなっておる。これがこの映画の持つ、重大な瑕疵であることは否めまい。確かに抑制と解放(暴力)を対比させるのは定石であり、エモーショナルを引き起こすことは周知の事実である。ただ、抑制の割り合いが長いと興が削がれ観客を去勢してしまうこともまた事実。エレベータ内のスローカットを駆使したキスシーンで、おおっ、と思えば、それはやっぱり暴力に繋がるシークエンスであって、暴力以外のシーンでは空気を読め、雰囲気を味わって我慢しろ、という作劇を引っ繰り返すものではなかった。作劇と言えば話自体も目新しいものではなく、その抑制された淡々とした話運びから80年代的だと懐古する向きもある。が、『タクシードライバー』ほどの抑制と解放の美しいバランスは本作には存在しないのだな。

 まあ、ごたごたと述べたが、これはいち個人の見解であるということは憶えておいていただきたいし、褒める人間も多数観測できたということも肝に銘じておいていただきたい。たまにはこんな映画もある。


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