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『ウィンターズ・ボーン』 暴力と因習が支配する残酷な世界の中、大人にならざるを得なかった少女の物語 - 1953ColdSummer

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『ウィンターズ・ボーン』 暴力と因習が支配する残酷な世界の中、大人にならざるを得なかった少女の物語


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ウィンターズ・ボーン
WINTER'S BONE
2011/アメリカ PG12 監督:デブラ・グラニック 主演:ジェニファー・ローレンス


 このくそ寒い中に外出するのはとても嫌なのだが、家中に籠城しておるだけでは食料、燃料、締込褌など、生活必需品に窮することとなるのは自明の理であって、しょうがないので厚着をし、手にはぁぁっと息を吹きかけ、ちゃっぷいちゃっぷい言いながらスーパーマーケットに赴くと、そこは同じくちゃっぷいちゃっぷい言うている人たちで人いきれ、生ぬるい空気の中、肉、酒、煙草などを買い込んで、店内に入れず凍死した人の死体を尻目に、これまたちゃっぷいちゃっぷい言いながら帰途に着く。

 たったこれだけのことを偉そうに書くと、豪雪地帯に住んでおる人、或いはシベリア抑留経験者などから、何を甘えたことを吐かしておるのだ、それがしは零下百度のあの地獄を耐えたのだ、などと、やや誇張気味なお叱りを受けそうなものであるが、寒いものは寒いのだから仕方がない。と、数ヶ月後には「暑いものは暑いのだから仕方がない」なんて開き直っておるであろう乃公は思うのである。

 さて自分とこより寒々とした地域を見て心の安寧を図ろうというわけではないが、というかそんな陰湿な人間にはなりたくないものであるが、サンダンス映画祭でグランプリ、という触れ込みも耳に心地良い『ウィンターズ・ボーン』をようようと観てきた。これがアメリカの暗黒史だの暴力だの苦難だのと散々っぱら予告で煽っておったので、乃公は膝を正して公開を待っておったのである。

 排他的な地縁と寒々しさが支配する寂れた山村。こうしたしみったれた環境がただ生きようとする人間の足を延々引っ張り続けるというのはままあることで、世の中には、オギャーと泣けば銀のスプーンでお口を満たされる赤子も居れば、オギャーと泣くとやかましいと引っ叩かれる赤子も居るのだ。その点、地縁の悪さ、血縁の悪さをダブルミーニングとしてひとつの映画に落とし込んだこの映画は現実的であると言えよう。このいやらしい山村に住む少女と弟妹の母親は心を病んでしまい、ドラッグ・ディーラーをやっていた父親は官憲に捕縛された挙句、家と土地を保釈金の担保としてとんずらしておる。そんな状況から襲い来る苦難を予想することは容易であり、理不尽に晒される運命は最早避けがたいものであると察せられる。

 こうした山村(厳密には地域が限定されておるのだが)に住む人々は「ヒル・ビリー」と呼ばれ、猟と家族と歌を愛するステレオタイプなイメージで見られることも多いが、その実、まじないを信じ、原始的な狩猟生活から凶暴性を持って見られたりするという偏見も多く、ええとローカル・ルールを作らざるを得ないということ自体が地縁に恵まれていない証左なのだが、ルール……掟、家族の、絆、といった前時代的な規範に囚われつつ、苛烈な環境の中を過ごさねばならぬという運命を抱えたる彼の人々に比べ、茶の間の延長上で踊ろうが屁をひろうがそれが命運に直結しない我々の視点から言うと、冬枯れた色調の薄さとも相まってどこか、現実から乖離しておるようにも見えないこともない。が、あくまでこの映画が現実的であるのは、その暴力性に起因する。

 レッド・カメラによって淡々と撮られたこの映画は、有形無形を問わず暴力に支配されておる。一応、失踪した父親の行方を突き止めるというミステリ的な構成でもあるのだが、最後の方のとあるシーンで、そんなところには比重は置かれていなかったのだとハッとさせられる。ミステリでいう「オチ」の場面であるのに、そこには説明は用いられず、ただ、チェーンソーの禍々しい轟音が響き渡る。暴力とドラッグに毒された物語の終焉が、機械的に訪れる。

 保安官ですら介入できないカントリー・ノワールの世界と、観客は決して介入できない「映画」という表現媒体の、美しき一致の瞬間。

 その寒々しさに心なしか疼痛すら覚えてしまいそうな世界で少女はたくましさ、強さを学んだ。否、強くならざるを得なかった。本作で描かれる自然は寓意的、メルヘン調に戯画化されたものでは決してなく、ただ厳然とした障害でしかない。家族、という単位は崩壊しており、きょうだいだけが手を伸ばせる単位なのである。
「WINTER'S BONE」は題名でなく、「犬に骨をやる」というスラングとして強調されておることに考え至り、何が守られ、何が見捨てられたのかが芋づる式に理解できる。かくも残酷な世界を少女は生き抜こうとしたのだ。

 主人公である少女リーを演じたジェニファー・ローレンスは、当初、「美しすぎる」という理由でオーディションを落とされそうになったところを、徹夜して製作陣を追いかけボサボサの髪と寝不足の顔を見せ「どう? ぶさいくでしょう?」と言い放ち、リー役を勝ち取ったという。因業な村社会を生きる女性としての彼女のルックスは力強く、抗う労力に見合うだけのものであったと思う。これは女優として、立派な経歴になるのであろうと思うのだね。


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