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オリジナル版『ドニー・ダーコ
その『ドニー・ダーコ』の続編の企画があるのを知ったのは、寡聞にして、去年の今頃くらいだったと思う。もう撮影がクランク・インしていた時分だ。
ドニー・ダーコという少年は、終末までの28日6時間42分12秒を世界の救世主として過ごし、やがて飛行機のエンジンに潰されて死んだ。
そんな兄の死を受け入れられなかった妹、サマンサ・ダーコを主人公に据え、新たな「世界の終わりまでの3日間」を過ごす話、というのは本作『ドニー・ダーコ2』の大筋も大筋に過ぎないのだが、原題『S.DARKO』……SAMANTHA DARKO の名に相応しく、二次創作的でありながらも、オリジナルの世界観を継承しようとした痕跡が随所に窺える作品となっている。オリジナルでもサマンサを演じていたデイヴィー・チェイスも美しく成長し、彼女の怪演――まあ、『ザ・リング



さて、本作の主題は……という話に入る前に、ドニー・ダーコがすでに死んでいる世界のお話から書き始めたいと思う。兄の死から逃げ出すようにサマンサがビッチな友人と訪れた町。そこは、イラク・ジャックというイラクからの帰還兵が異常者として石持て追われ、宇宙マニアのナード少年がイコン的な「湿疹」に蝕まれ、そして、夢の中で銀色のウサギ人間が現れ、死んだ人間が、タイム・リーブにより蘇生し別のルートを歩き始める世界だ。
文字で書いただけでは何のこっちゃとチンプンカンプンだろうが、本当にそういう映像を見せられるのだから仕方がない。個人的には、これらの世界……世界が矮小化された「町」に於ける悪夢とSF的な物語は、『ドニー・ダーコ』の続編というよりも、それの再構築を目指したモデリングにも見える。二次創作として、「よし! 俺がいっちょ自家製『ドニー・ダーコ』を作ってやるぜ!」と、そういう目論見の元に企画が進められたのではないかと、そう疑っている。
結果として終末の新たなヴィジョンを見せ、そこに至るプロットに多少の負荷をかけながらも、箱庭のように『ドニー・ダーコ』の世界を構築しようとした努力と気力は認められるが、やはりオリジナルに対するコンプレックスと過剰な意識から、脇の甘い作品になっていることは否めない。個々の映像は安っぽいながらも独自性を打ち出そうとしている風には見えないこともないのだが。



各種の奇妙な映像を見せられ、「実は夢オチなのではなかろうか?」と多くの人間が懐疑的になっている最中、突如として主人公、サマンサ・ダーコがあまりにも唐突な死を迎える。作中世界のみならず、ここで観ている人間に分岐を迫られる。中盤で主人公が死にました。さあ、これは夢オチですか作品内現実ですか? と。そして、サマンサの死をスイッチとして、かつてドニー・ダーコ少年が過ごした「終末までの数日」を、観ている人間も歩むことになる。


これは夢か現実か、と問いかけるタイプの映画は実に杜撰なものが多く、何故ならばどんな不条理でも「夢」の一言で片付けられるし、また、「別に現実の出来事とは断言してないでしょ」という逃げ道も用意でき、安易にサスペンシヴなものを拵えられるからだ。
本作、『ドニー・ダーコ2』もそんな例に漏れず、杜撰な部分もある。杜撰、と言ってピンと来ないのならば説明不足と言い換えてもいい。一見して、伏線なのかイコンなのか、ただのハッタリなのかもしくは製作者のごく個人的な趣味なのかが判別し辛いシーンが多々あるからだ。ただ、それらのシーンの挿入はテンポが比較的良く、ここはMTV的なガチャガチャ編集の良い部分を抽出できていると言ってもいいだろう。
そして、「終末まであと○日」と表示されるに至り、細かいことは忘れて作品のグルーヴに乗ることができる。

ここまで書けばもうお分かりの通り、『ドニー・ダーコ2』は限りなく二次創作的で夢と現実どっちつかずの妄想的な映画だ。オリジナル『ドニー・ダーコ』に対する妄執に発端を成す、と断言してもいいだろう。カルト傑作『ドニー・ダーコ』ブランドの呪縛から逃れられず、その題名からしてドニー・ダーコ少年が過ごした終末までの日々のひとつに織り込まれていても違和感は無い。ただし、主役は飽くまでドニー・ダーコ少年であり、サマンサ・ダーコはその妹に過ぎない、という縛りの元に。
最初は自分も、もしかしてドニー・ダーコ少年が蘇るまでの復活譚なのかなあ、と呑気に考えていた。だが、『ドニー・ダーコ2』はもっと陽気で、しかし閉塞感を出汁にした繰り返される終末の物語であった。そこにカルトな文脈はほとんどなく、容易に人をビックリさせるホラーのようでありながらも、その実コメディでもあるという複雑な構造を持つに至る。私家製ドニー・ダーコを作ろうという単純なモチベーションから、こんなごちゃごちゃとした絡み合ったものが生まれてしまうというのは、映画の魔法のひとつでもある。



徹底して彩色された原色の町。そしてスピード編集で速く流れ行く雲。これこそドニー・ダーコ的な演出だと自慢顔を監督が決め込んでいたのかどうかは知らないが、やはり本作のそれらの演出は表面的なものである。本質的な部分とは一切の関係が無い。
そして訪れる「終末」の描写。
本作が描いている、或いは描きたかったのはこの「終末」であって、恐れずに断言してしまうと、それまでの描写はすべて「前振り」だったのだ。そう感じたとき、これは現実だいいや夢だという葛藤はどうでもよくなり、ありふれた言い方をすれば、その世界観の提示にハァっとため息をついた。
余談だが、本作『ドニー・ダーコ2』はちょっとしたロード・ムービーでもある。まあ車が壊れて不思議な町に入り込むまでの冒頭20分だけを根拠にロード・ムービーと言ってもいいものかは微妙だが、とにかく「ヴァージニア州? それってどこだ?」と登場人物に言わせてしまう程度の距離感覚は味わえる。このちょっとしたロード・ムービー感覚をそのままひとつの映画にしてしまったら、『ドニー・ダーコ』までとは行かなくとも、これまたちょっとした佳作になっていたのではなかろうか。と私見を述べて筆を置く。
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