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『岸辺の旅』 - 死んだ人のいない家はない - 1953ColdSummer

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『岸辺の旅』 - 死んだ人のいない家はない


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辺の旅
Vers L'autre Rive/Journey to the Shore
2015(2015)/日本/フランス/G 監督/黒沢清 出演/深津絵里/浅野忠信/小松政夫/村岡希美/奥貫薫/赤堀雅秋/蒼井優/首藤康之/柄本明/他 原作/湯本香樹実/『岸辺の旅』
いかないで。
きえないで。
このままずっと、
そばいにて。



 死人がたくさん出てくる物語が苦手なのかも知れない、と自覚したのはついぞ最近だったような気もするし、随分と昔の事だったような気もする。ここで留意してもらいたいのは、「死人」ではなく「死体」がたくさん出てくる物語には左様な複雑怪奇な感情は抱いてはおらぬというところで、じゃあ死人と死体のニュアンスはどう違うんだ、と申されますと、これはひとえに人格の有無であると言上せざるを得ない。

 さて。
 死人が帰ってきた。
 死人との旅が始まる。

 生前の思い出に加え、新たな記憶が加わってゆく。そしてこの生前/死後と倍加した人格を処理するには、人間の一生は短すぎる。

 失踪した夫・優介(浅野忠信)が土足で帰宅し、自分はすでに死んだと告白する。妻の瑞希(深津絵里)はそれを淡々と受け入れ、やがて2人は優介失踪中の3年間を巡る旅に出る。

 黒沢清最新作のこの映画は、人間と霊魂の垣根も曖昧な幽霊譚だ。
 ホラーでもあり、ロマンスでもあり、ロード・ムービーである本作のジャンルを断定できるような強い言葉を自分は持たない。やがて岸辺に辿り着く2人の旅は旅情に溢れ、人情味があり、ぽつりぽつりと生前の事が明かされて行き、本来なら視えないはずの幽霊がきらきらとしたロケーションの中、視覚的に物語的にもその輪郭線を強めていく様子は穏やかに、しかし揺れるカーテンの裏で含み笑いを以て緩急をつけながら黒沢清の幽霊哲学を補強する。「怖い」という感想に安易に逃げる事を許さないヒューマン・ドラマの体裁を取りながらも、繊細で嫋やかな深津絵里の美貌にはにかみつつ、我々観客もいつか寄る岸辺……彼岸に想像を馳せさせてしまうのは、この映画は飽くまで冥府のモノであるという確信じみたものがいつしか芽生えてくるからだ。

 また、原作に表記されているという「死んだ人のいない家はない」という一文を基に日常を過ごす幽霊を描きながらも、カメラが切り替わると人が現れる/消えるといったお馴染みの描写や、境界線としてのオブジェを用いて、彼岸の住人を日常の異化分として突き放すアンビバレンツを主軸に据えた作品でもある。それを縦軸とするなら横軸はこれ、人間としか思えない幽霊の息遣いと、それを難なく受容し共同体の一部として生活に組み込む生者たちで、「死とは『過程』であり、死んだあとで分かる事もたくさんある」という黒沢清の言を胸に縦横のコントロール比を自分なりに見比べてみるのも面白いだろう。

 入念に映される廃屋は巨大な棺であり、生命の抜け殻だ。意図的にか作中から排除されている死体描写を本作では、無機物に託して活写する。死んだ人のいない家はない。死んだ人のいない家は、即ち生きている。つまり家ではない……外界。家の外、外界での死者、優介の眩しさと豊かな表情。その反面、死の森での陰鬱な霧と劇伴。森ですらが死んだ人の棲家として「家」と同等以上の扱いを受ける本作では、この様に時折生と死、彼岸と此岸の境目が良い塩梅にぼやかされる。生者と死者の――優介と瑞希の、隔離されるはずだった者同士の、道筋がひとつになる瞬間だ。そうして言葉と立場が共有され、作中、宇宙に喩えられる永遠の一部を垣間見られる事になる。隔てられるべきものと隔てられざるものが混在した岸辺に瑞希が到着した時、我々観客もまた彼岸を覗き見る暗夜行路の仮想体験を終えるのである。


岸辺の旅 (文春文庫)岸辺の旅 (文春文庫)
湯本 香樹実

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