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『アメリカン・スナイパー』 - 神話なき国の人工英雄 - 1953ColdSummer

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『アメリカン・スナイパー』 - 神話なき国の人工英雄


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メリカン・スナイパー
AMERICAN SNIPER
2015(2014)/アメリカ/R15+ 監督/クリント・イーストウッド 製作総指揮/ティム・ムーア/他 出演/ブラッドリー・クーパー/シエナ・ミラー/ルーク・グライムス/ジェイク・マクドーマン/ケヴィン・レイス/コリー・ハードリクト/ナヴィド・ネガーバン/他 原作/クリス・カイル/『ネイビー・シールズ 最強の狙撃手』
米軍試乗最多、
160人を射殺した、
ひとりの優しい父親。



 むかーしむかしのお話で恐縮だし別に恐縮する必要も無いと思うのだが、当時自分が運営していたサイトと相互リンクしてくださっていたサイトのひとつに、日記が段々と悲鳴めいてきたサイトがあって、その内容が凡そ「仕事がきつい、辛い、厳しい」というもので、それだけならマッチョの皮を被ったウィンプ諸氏の「人生訓」の出汁にされてトン、であるというのが定番なのだけれども、この話には恐ろしい事に続きがあり、何がどう恐ろしいんだい、勿体ぶってると映画館のメンバーズカード提示を求められた時に間違えてゲオのカードを出してしまった事をワールドワイドウェッブを通じて全世界にバラすよと言いたい気持ちもよく分かるのだが、少しく待っていただきたい。

『アメリカン・スナイパー』を観て連想したのはそんな卑近な事だった。卑近な事とは言っても映画館のメンバーズカード提示を求められた時に間違えてゲオのカードを出してしまった事ではなく、サイトの日記を通じて悲鳴を上げ続けた彼の事だ。
「仕事がきつい、辛い、厳しい」といった旨が繰り返され、やがて彼の日記は「イライラが治まらなくて母親に包丁を投げつけた」「上司に殴られた頬が完治しているのに痛い」「バレてもいいから会社に火付けができないかな」と不穏な文言が綴られるようになり、ある日を境に404 not foundとなった。
 
 本作で描かれる戦争PTSDを左様な個人的な事柄に矮小化せしめるつもりは毛頭無い。だが、思い出してしまったものは仕方がないし、そうした事をよりによってこの映画を観て思い出す以上、自身の映画力(エーガちから)が属する地獄と自分にも半歩間違えば彼のようになる土壌が形成されている事が炙り出されたかたちになる。であるからこそ、「羊を襲う狼」でもなく、「羊を守護る番犬」にも成り得なかった我と我が身を恥じてメェメェと哭く事しか出来ず――「番犬」であるようにと父に育てられた本作の主人公、クリス・カイルの背中に神話なき国の英雄人工像を見るしかないのだ。

 160人以上を射殺し、伝説(レジェンド)と半ば愛称半ば本気で呼ばれる狙撃手クリス・カイル。御年84歳のクリント・イーストウッドによって再構築された彼の人生には、スタッフロールの体裁を採った長い黙祷も添えられている。その「英雄視」の有無を巡ってアメリカ本国の保守派とリベラル派が大喧嘩しているとはもう旧聞に属するかも知れないが、ただ自分としては「どう解釈するかは人それぞれ」といった玉虫色の保身に逃げておくのが得策とも思える。それ程までにこの映画は恐ろしい。中東情勢に色目を使って戦争映画としては最大のヒットを飛ばしたという事実もさることながら、それでいて多くの人間にニュートラルな映画だと受け取られる(だから右派も左派も揚げ足で騒いでいるのだ)その氷のような薄笑みじみた佇まいも恐ろしい。……やっている事は、仕事疲れで異常を来たしつつある一人の父親の話であり、神話に飢えた国に英雄像を設置してみたらば、というややもすれば涜神的な試みであるのに。

 狙撃(スナイプ)される兵士や女性(!)をダイレクトに映す事により、戦争映画の近代的なエッセンスは伝わってくる。だがともすれば露悪と断ぜられそうな残酷シーンは本作に取っては前提にしか過ぎない。では人々を白熱の舌戦へと導いた悪い種子はどこにあるのだろうか? それはくどい程の星条旗に代表されるナショナリズムと、神経症的に強調された戦場PTSDの描写の対比によって、政治的中立を保とうとした両極端の鉛の重さにあるのでは、と個人的には考える。仕事疲れに「自己責任」と斬って捨てるタイプの冷淡さは自分の中にはあまり無いと思う。が故に心的外傷後ストレス障害に苦しめられる前提で描写される束の間の家族団欒がうら悲しく見えてしまう。戦場に居るクリスと家で心配している妻の間に繋がるケータイ。そこには何が溶融していたのだろう。

 実在し伝記を書いたクリス・カイルの突然死により、どのように映画の結末の方向性が変更されたのかは知る由も無いが、その事件がより本作をドラマティックに、ヒロイックに彩ってしまった事は疑いようもなく、人工的に作られた「伝説の英雄」が悲劇のままに人生の幕を閉じたのは不謹慎を承知で言えばひとつの神話の完成である。ギリシャ時代ならともかく現代の職業軍人の逸話を神話と断じるセンスが非常に危険なものである事は百も承知だが、こと映画に関してのみはひとつの悲劇譚として戦争映画史に列せられてもおかしくはないと思う。と同時に、中東に対するプロパガンダ映画であるとの意見もあるわけで、この「映画を観てズシンと来た」と「これはプロパガンダだ」という意見の間にも天秤があり、双方の意見が重石となって観客にもニュートラルに物事を考えよと要求する。仕事に疲れ神経をすり減らし、やがてサイトを消してしまった彼にも反対側の重石があれば良かったのに、というのは第三者からの無責任な傲慢というもので、本当は重さで釣り合いを取る中立なんてものよりも端から重さなぞ無い方が良い。我が子に「sir!」と呼ばせるクリス・カイルの父親。子供が背負うのは、人殺しの重責でなくても良い。


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20150303 13:10 │ from 映画感想 * FRAGILE

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