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『リヴァイアサン』 - 母なる海洋、或いは怪物のはらわた - 1953ColdSummer

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『リヴァイアサン』 - 母なる海洋、或いは怪物のはらわた


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ヴァイアサン
LEVIATHAN
2014(2012)/アメリカ/フランス/イギリス 監督/ルーシァン・キャステーヌ=テイラー/ヴェレナ・パラヴェル 出演/いろいろな漁師さん
これは映画か 怪物か?


 要するに、海で働くおじさんたちの迫真に迫ったドキュメンタリなのであるが、これを「ドキュメンタリ」と括るにはいささかの抵抗があり、それはデジタル一眼レフ(DSLR)と超軽量小型カメラGoProを用いたアクロバティックな撮影であるとか、物語中心主義とは凡そ乖離した、言葉少なに映像に偏重したその「海上の黙示録」に埒外の映画力(えいがちから)を感じた事であるとか、そうした力学が働いたのも事実なのだけれども、原初のスープ……海洋のはらわたを怪獣(リヴァイアサン)から引きずり出すがごとき下位なる人類のバーバリズムに、ふだん知覚の範囲でしか象られない苦役や労苦の神話的な再構成の可能性を観たからだ。

 この映画の文法を踏みにじる深淵の作品に、野心的な渇望や社会性に根差した媚態の一切は貌を見せず、が故に観客(或いは無神論の愚直な信徒)は忘我を強いられる。
 ひたすらに接写される釣り上げられた魚群や漁船アテーナ号の部分々々に、盲人が象を撫ぜるがごとき知識欲がむくむくと鎌首をもたげてくるのだけれども、ホラー映画に近似した無味で無機質な撮影と特権的な「意味の隠蔽」により浅はかな詮索は空転する。左様な決着の欠如を嘲笑うかのように――むしろ端から人間などに着目していないかのように、ノイズ・インダストリアルめいた環境音が轟々と響き続ける。

 映画の皮を被った怪物。

 海をるつぼと化す神話の怪物に遭遇したとき、人は死ぬ瞬間すら選べなくなるとはよく言ったもので、2014年の日本で斯様な怪物に出食わした自分は言葉すら選べなくなっている。

 ニューベッドフォードから出港したアテーナ号を追ったという本作は、メルヴィルの『白鯨』の亡霊を追弔したというよりも海上でのドラマの特権性を剥ぎ取ろうとしているようにも思える。人間が人間である事に何ら意味も無く、縦横に仕掛けられた小型カメラによって二足歩行動物の視点すら捨てた本作の肉体性は海に、機械に、獲物にすべて寄与され統一され、まさしく古怪な肌触りを獲得している。

『Canst Thou Draw Out Leviathan with a Hook?』(汝は鈎針でリヴァイアサンを引き出すことはできるか?)というプロジェクトの一環である本作『リヴァイアサン』では元々150時間以上もの「素材」があったという。ポートレートや環境保護活動も通じたアートを訴えかけていくこのプロジェクトでは、1/25秒でもフレームが前後すればまったく違う画になってしまうので素材を振るいにかける折に随分と難儀をしたらしい。その苦労たるや当人以外の人間が簡単に共有できるものではないのだけれども、産まれた被造物を衰弱も知らぬまま愛でて上気することは誰にでも出来るので、くどくどと言葉を連ねてしまったが兎角、視覚と聴覚を研ぎ澄まして体験する事こそが、「我々もまた怪物であると自覚して欲しい」という製作者の意を汲むことになるのであろうと思う。

 作為とドキュメントのこうした幸福な融合を目にしてしまうと、もう映画なんて終わらせていいんじゃねえのか、てな危険な考えが頭をよぎったりよぎらなかったりするのだけれども、さした短絡的で暴力的で社会性の欠片も無い忘八がどこに戻ってくるのかと言うと、結局、映画に戻ってくる。虚構と観測者という関係性に保護されたいし、それが担保する約2時間ほどの享楽は手軽であるからだ。その浅ましい行為が導き出すところは何であれ無意識化に人間は最適化されていくという事で、であるからして『リヴァイアサン』のような怪獣に遭遇するとすげーすげーと語彙が極端に減殺せしめられる。もう今年はこんな怪物映画に遭遇する事は、レンタル屋でタイトルに騙されて変な怪物映画を借りてこない限り無いであろうが、板一枚隔てた地獄に汗する獄卒ですら「怪物」の素材とする本作は今年ベスト入りである事を発表して筆を置きます。


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