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箱庭に生きる人々 - 『メトロマニラ 世界で最も危険な街』 - 1953ColdSummer

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箱庭に生きる人々 - 『メトロマニラ 世界で最も危険な街』

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トロマニラ 世界で最も危険な街
METRO MANILA
2013(2013)/イギリス/フィリピン/<未> 監督/ショーン・エリス 出演/ジェイク・マカパガル/アルセア・ヴェガ/ジョン・アルシラ/他 


 フィリピンはバナウエでの作農を止し、家族全員が食っていける定職を求めマニラへと上洛を果たした主人公一家を見て、不幸の予感しかしない、つうのは露悪に立脚した見解に過ぎやぬと一笑に付せるものでもなく、享楽的且つ退嬰的なネオン看板に目を輝かせるワガの子に、さりげなく貧農の死生観を伝える父オスカーの振る舞いからラッキーな予感を感じる人が居るとしたらばそれは人でなしというものであるが、こうはなってはいけないよという人でなし……彼らも三食がかかっているので人でなしと断ずるのは短絡であるやも知れぬが、まあ、人足の弱味につけこんで搾取する側の極めて記号的な人でなしどもがオスカー一家を嗤い、締め出し、メトロ・マニラに甘い夢見とったらあかんどと肌身に沁みて分かっているであろう事を吠え立てる。ここはマニラ、狂った街。

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 オスカーとその家族たちが糊口を凌ごうとする様子を写すカメラはドキュメンタリ的な無機質で、ショーン・エリス、と聞いてははあ、なるなる、てな得心からは随分と離れているのだろうけれども、娘が見つけ、いたわる子猫や、さんざ圧迫面接を受けたオスカーがやっとこさ潜り込めた警備会社の輸送車と、逆方向に飛んで行く飛行機――重力に縛られた生活とバナウエで抱いていた夢の現実的なクロスライン――など、作中のマニラにたゆたう時間そのものを造形せんとする作為は程好く凝らされていて、ジャケットやサブタイトルの恒例の嘘っぱちを早々に教えてくれ、また、それはとても良い事で、どこがどのように良いのか言上致しますると、人生苦に喘ぐひと、にんげんに作為を施して扇情するというのは、わたしの脳内でモンド映画のそれと文脈的に連なるところが多くして、はな、真剣に嘘をつく様子がとても映画的でもあり、その事実を前にしては警備会社の同僚が、実は選挙に関する大金をくすねる予定で……ときな臭くなる後半ですら、映画の箱庭と作中のリアリティに齟齬を来たすものではないからであります。

 騙され騙されついにはスラム街にまで落ちてきたオスカー父ちゃんが、「おい、何か笑えるジョークを言ってみろ」などと圧迫面接ハラスメントを受けている間、2人目の子供を妊娠中の妻はおっパブ、じゃなかった、セクシャルなサービスも提供するパブで、服を脱げだの客のタマを揉むのよだのと、両手をバッテンにして生理的に「無理!」と言いたくなるような面接をまた受けているのであって、本作は比律賓でオールロケを敢行した以上入念に社会通念景気に事情の下取りもしたのであろう、観光客向けではないただ生きるためにこの魔都にやって来た人々への、阿修羅めいたマニラの貌を直接的に写す。それがいささか脚色されていようがいまいが、映画とは目の前に提示されているものがすべてなので、写真家が造った映画であるからとアート方面に猟色的な視線を向けることをせず、本作で規定されたこの街はこういう所なのだ、つて、拉致監禁の場面を観、悪い計画を持ちかけて狂ったように笑う同僚の開きかけた瞳孔を観、それらが一定のバランスを保っている事にこそ映画の誠実さを感じるべきなのである。勿論、派手な銃撃戦ならび唐突な宇宙人の登場などは無いし、最後がひどく都合が良いものに見える向きも否定はしないが、このショーン・エリスが造形したマニラの箱庭からは全く逸脱してはいない。自分が定めたルールに自分がちゃんと準じている。にも関わらず、大きな夢を仄めかして終わるなんて粋なやり方ではありませぬか。

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 生活苦や貧困からの脱出を起点とし、終点とした本作に西洋合理的な拝金主義の匂いがさほどに感じられぬのも特筆すべきところである。しかし銭金にまつわるなにがしが起承転結いずれにも存在しているので正味の話、拝金が希釈されただけなのかも知れないし、巧妙にコラージュされているのかも知れないが、ツールとして以上の意味をカネに与えなかった作劇には、奪取する事よりも手に入れた後どうするか、といった前向きな主題も汲めるし、これでそう汲んでいるのがわたしだけであったらまるで阿呆なのだけれども、ペニシュラ・ホテルつう建物に対する娘の童心や、ただ毎日を汗水垂らすだけで浪費する市井に対する外部からの、飢餓感めいた一喝が聞こえてくるような映画でありました。


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