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ビョーキもらった - 『イット・フォローズ』


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ット・フォローズ
IT FOLLOWS
2016(2014)/アメリカ/R15+ 監督/デヴィッド・ロバート・ミッチェル 出演/マイカ・モンロー/キーア・ギルクリスト/ダニエル・ゾヴァット/ジェイク・ウィアリー/オリヴィア・ルッカルディ/リリー・セーペ/他 
“それ”は ずっとずっと憑いてくる


 セックスすると感染し、IT(それ)に襲われるようになる。というワンアイデアはベタなようでベタではなく、性行為に無縁なティーンズの溜飲を下げつつも、逆に性行為基準でしか異性を見る事ができない猿にも警鐘を鳴らすというメタとネタをも内包しており、たいへん感銘を受けました。セックスとタナトスを露骨に弄ると何やっても寒くなるのはインターネットのお約束ですが、こと映画に関しては露骨であればあるほど良くなる可能性もあるわけで、性愛とそれが転じた死の匂いを主軸に据え、かつサバービアンの少年少女の文脈にも絡めた本作がサプライズヒットを飛ばしたというのもむべなるかな。冬枯れ……とまでは行かないが、秋風悲し郊外地帯に響き渡る不穏なBGMも作風に合っており、このサントラを聴きながらノートに自作の神様の絵とかその神様への報告とかを書き連ねたりすると筆が進みそうです。そんな透明な存在の話はどうでもいいのですが、本作の低予算ならではのアイデアの白眉はやはり、襲ってくるIT(それ)が顔にチョチョっとメイクしてあるだけの普通の人にしか見えない、という点でしょう。それも露骨に阿呆みたいな動きで迫ってくるのではなく、基本的にツカツカと歩いて近寄ってくる。なので、感染中(取り憑かれている)の人間からは遠目には普通の通行人と判別し辛い。周囲の人間にいちいち「みんな! アイツが見える!?」と確認して「見えるよ」と答えられたらばやっと安堵するという始末。ゾンビ映画と某作のブルース・ウィリスのいいとこ取りですね。でもシック……ごほん、某作と毛色が違うのは、本作のIT(それ)たちは物を動かす(動かせる)というところで、髪は引っ張る、電化製品はブン投げる、挙句、捕まったらレ●プされるという肉体派な一面が作品の静と動をビビッドに区切っています。肉体派と言えば、そもそも感染経路が肉体同士のまぐわいという事で、ここに青春真っ盛りの若人の苦悩が表面化しているのもドラマ性を付与しています。ビデオを見せたりウィジャ・ボードをこねくり回したりといった二次的なガジェットを介在させることなく、肉体同士で直(じか)に! ってところが骨子を支え、あの勝ったんだか負けたんだかとにかく哀切な結末へと観ている者を導く。IT(それ)の存在についてはあちらの国で喧々諤々とした議論が交わされたらしいですが、それが性病の暗喩であろうが妊娠の暗喩であろうが、快楽に堕ちるというよりは恐怖から結びついてしまうなんてちょっとロマンティックじゃないですか。水着ショットがやたらあったり女優陣が美人揃いなのも監督のフェティズムを感じられて眼福々々。作中のセックスに一切の法悦が無いのもまた監督の闇を感じて良し。無軌道な少年少女に災いを以て道を正す、なんて言うとちょっと老害感をハンドルできていないようなイメージを与えてしまいますが、引用されるドストエフスキーなどに持って回った、あー、悪く言えば説教感良く言えばメッセージ性を感じることもあり、それがどういうメッセージなのか平易に噛み砕いて説明できないのが私の脳味噌の限界なのですが、要するに何か言いたかったんだろうと感じさせるに十二分な余韻を残す事請け合いです。思春期の神経症的な性願望を経験者と未経験者(かんたんに言うと童貞)に役割分担させ、あの年頃の男は猿みたいなもんだよと身も蓋もない事実を突き付けているのも現実的でマル。何でホラーが現実的でマルなんだよと申されますと、多角的に、様々な角度から、主人公ジェイ(マイカ・モンロー)の水着姿を舐め回すように、見れたら良かったのだが勿論そんなこたあできないので解釈遊びをするくらいしか脳のカロリーを消費する方法が無いのだけれども、多角的に、様々な角度から、それも誰しもが経験したティーンズの性愛に関する苦悩を提示されているが故に、最後はどういう道を示唆しているのか、そもそもIT(それ)は実在したのか(してるだろ。物が動いてるんだから)、発端や感染経路は本当にセックスだったのか、現実とリンクさせこじつけて考える愉しみと余地が本作には残されているわけです。スクールカーストの話になるとやたら饒舌になる人現象みたいなものですね。ところで私はスクールカーストの話になるとやたら饒舌になってしまうのですが、一種の青春、否、性春モノとしてカテゴライズされてもおかしくない本作から、スクールカースト云々を刈り込んだ判断は支持します。お陰で半径ワンタッチ圏内という絶妙な世界の幅でホラーと青春を両立させる事に成功しており、また性愛にまつわるエトセトラに全力で注力されていて観点もブレることなく集中できる。屋根の上にIT(それ)が全裸で突っ立っていたシーンなぞは集中の極みでしたよ。それ男だったけど。


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『スーサイド・スクワッド』 - やらない悪よりやる偽悪


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ーサイド・スクワッド
SUICIDE SQUAD
2016(2016)/アメリカ/G 監督/デヴィッド・エアー 出演/ウィル・スミス/ジャレッド・レトー/マーゴット・ロビー/ジョエル・キナマン/ヴィオラ・デイヴィス/ジェイ・コートニー/ジェイ・ヘルナンデス/アドウェール・アキノエ=アグバエ/カーラ・デルヴィーニュ/福原かれん/アダム・ビーチ/他 
世界はこいつらに
託されてしまった!



 本作のセックスシンボルことハーレイ・クインのビジュアルが公開された時からずっと首とディm10.jpgを長くして待っていた再殺部隊、じゃなかった、自殺部隊こと『スーサイド・スクワッド』をぼらぼらと観てきました。首とm10.jpgックを長くして待っていたとか言っている割には、「あ、もう今週から上映開始なんだ」とトボけた事を抜かす程度には最近各種のアンテナ感度が低いのですが、感度と言えば< censored>以下とんでもない事をワールドワイドウェッブを介して世界に発信しそうになったので自己検閲< /censored>あー事前に各種ニュースサイトやSNSの先行試写のひとたちが口をそろえて「これはひどい」「おもしろくない」「葛城事件を観ろ」などと唾を飛ばされておられたようで、いや最後のひとつは私が言った事なんですが、まあそんなことはどうでもいいとして、とにかく“面白さが不自由だ”という情報ばかりが訊きもしないのに目や耳に飛び込んでくる。デヴィッド・エアーといえばあの戦車の道は男道『フューリー』じゃなかった『フューリー』(感想)で命を賭した連帯を描いた監督であり、当時は深く感銘を受けたものなのだけれども、今回はDCコミックスのヴィランたちがぞめいて歩いて僅かな減刑のために体制の犬となるというもの。うーむ。これもいっその事ザック・スナイダーに撮ってもらった方がケレンが効いてて、具体的に言うとカットがいちいちマンガライクになってアメコミヲタクも歓喜するんじゃないのかな……と自分も一抹の不安を感じながらシネコンへと向かった事は正直に白状しますが、鉄格子をベローっと舐めるハーレイ・クインや、国家の犬たちにガン見されながら着替える(ブラジャーの色は赤だった)ハーレイ・クインや、もちもちとした尻たぶを揺すりながら歩くハーレイ・クインを見ているうちにそんな過去の事は忘れました。ジョーカーに恋する前、精神科医だったハーリー・クインゼルの時のチャーミングさも、狂人に恋するバリキャリ臭というニッチな市場を開拓していて大変眼福な事この上ない。身体能力は人並みだが映画の靭力を高めるという意味ではマーゴット・ロビーは良い仕事をしていたのではないのだろうか。ハーレー・クインの事ばかり書いていますがハーレー・クインの事くらいしか書くことが無いのは別にあなた方のせいではありませんので安心して下さい。とは言い条、アメコミ映画の乱発とネット論壇はそろそろ地獄へと片足踏み込んでいる状態だと思うのですが、別に本作もハーレー・クインに萌へーとか言っていれば棺を蓋いて事定まるものではなく、とあるキーキャラクターの存在も面白い。「存在」と言って主語がデカければ、まあ、ネタバレしない程度に「敵」と言い換えますが、これが前半は『ザ・ウーマン 飼育された女』(感想)のポリアンナ・マッキントッシュみたいな汚らしい佇まいで、クネクネユラユラとしていて非常に人外(メタ・ヒューマン)くさくてハッタリが効いている。が、その弟もまとめて結局既視感が払拭できないデザインに落ち着いたのは原作に配慮したのかコンテ作るのが面倒臭かったのかは知るところではないのだけれども、逆にギャラクタスが原作準拠の巨神ではなくてガッカリした『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』などの前例もあるので(これはマーベルだが)、映画での“ジャスティス・リーグ”というブランドを育てている最中のDCとしては歩み寄り迎合できる最低ラインだったのだろうという事で納得しておく。クネクネユラユラ面白かったし。ところでハーレー・クインと来たら次はあの人に決まっているんじゃないのこのクソアメコミ音痴がブームに乗ってスポーンフィギュア集めてた事バラすぞこの野郎と思われる向きも多かろうと思います。にも関わらず尻(ハーレー・クイン)の次はクネクネユラユラ。尻の恋人であり公開前の下馬評も混乱を極めていたジョーカーを差し置いて! お気持ちは察するに余りありますが、ほとんど出てこないキャラについて何らかを申せと言われましても“HAHAHAHAHA...”と落書きされた壁はかっこよかったなあ、とか、ああ、こいつがロビンを焼き殺したんだなあ、とかそんな言葉しか出てきません。製作側の問題ですったもんだがあった挙句、ジャレッド・レトの意図する所とは別の所で嫌な力学が働いて、ジョーカーの出番が大幅にカットされたというのは巷の噂で聞きつけているものの、ハーレー・クイン(また!)の原作ファッションとキャッキャウフフしている回想を見せるためだけに出てきたんだよーと吹いても信用されそうなほど、ジョーカー出てきません。ジョーカーが居ると、悪漢らしく見えない(そう演出されていない)連中との間に真の狂人との齟齬が発生するから出番削ったのかな? と邪推してしまいます。いや狂人もパーティに混入させて許される枠内での暴挙・悪逆・非道を尽くしてこその非正規自殺部隊ではないのか、本作の前評判は「それをこそ観たい」という不健康な背景があってこそのものではなかったのか、とは、館内でシラケていた客もよく分からないところで笑っていた客も共有していた本来の期待点だったのだろうとは思いますし、G指定な時点で何かモヤッとしていた自分も、でも期待していたところです。それをハーレー・クインのチンケな盗み程度で「こいつらワルなんスよ~」という記号とされても肩透かしですね。まだこれ観た帰りに駐輪場でケンカしていた若人の方が悪そうに見えました。何かが。お話やモブ雑魚のデザインには平々凡々たるイメージが拭えないだけに、価値観の逆転とまで言うと大袈裟ですがここは自殺部隊をもっと強烈な悪漢として強調するべきでしょう。となると一部の戦争映画の文脈に近しくなってしまうわけですが、権力に従わざるを得なくなった非正規兵団のお話、として考えると元々戦争映画に近い文脈を持っている話なのではと思わないでもない上、せめて一人くらい埋め込んだナノ爆弾で首飛ばせという願望が鎌首をもたげてきて脳味噌に負荷がかかる。ヤバイ。頭のストレッチ。柔軟体操。となれば思考実験。ハーレーハーレー書きすぎたので百発百中のデッド・ショット(ウィル・スミス)に焦点を絞って考えてみよう。アッこいつ一人でも話が成り立ちそうだぞ! いやでもカタナ(福原かれん)周辺のなまったニホンゴが聞けなくなるし……。ヤバイ。頭のストレッチ。柔軟体操。となれば思考実験(以下無限ループ)


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サントラ

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新説・美肉を嬲るバイオレンス - 『ヘルケバブ 悪魔の肉肉パーティー』


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ルケバブ 悪魔の肉肉パーティー
BASKIN
2015/トルコ/アメリカ 監督/ジャン・エヴェノル 出演/ムハレム・バイラク/マフメット・アキフ・ブダク/ファディク・ビュルビュル/デリン・チャンカヤ/他 


 秋だからというわけでもないのですが、やはり季節の変わり目なので、多少のおセンチから溜息も薔薇となってこぼれる事ってありませんかね。自分の場合腹が減っているとそうなります。という事で、インターネットの端っこの方で局所的に話題になっていた『BASKIN』邦題『ヘルケバブ 悪魔の肉肉パーティー』をこないだ観たんですが、まずベルゼバブみたいなヘルケバブというタイトルが食欲をそそります。例によってトロマとまったく関係ないのに「悪魔の肉肉パーティー」なんてサブタイトルをくっつけられているのも食欲の秋という感じがしてとてもいいですね。パケ画と併せて80年代後半から90年代前半くらいのパチモン臭さを漂わせているのもこれまた、あのころ映画を観ながら食べていたお菓子類の味が反芻されるようでたまりません。いや見た目と食欲の事しか書いていない気もするんですが、これが、こいつが、この野郎が、中々の当たりクジでして、内容はもう凄惨の一言。「へっ? 地獄のケバブ屋も出てこないのに何でケバブ?」てな事をぼらぼら考えながら観ていた私が「ケバブ」の例えを理解するころには、地獄の蓋はもう開いていたという始末で。菜食とは違って“肉”には生々しさと申しますかどこかグロテスクさがイメージ的に払拭できないんですよね。その抽象的な印象を、具象化した……と言い切ってしまうのも「褒めるためなら手段を選ばない」案件かと思うので断言はできないのですが、敢えて例えるなら肉のイメージの擬人化と言うか肉が生き物になったらこんな感じと言うか……いやいやいやいや、肉は元々生き物だったわけで……と、ちょっとしたパラドックスに陥ってしまいそうな汚物様たちが登場するに至って、今夜は肉にしようと食欲が増進すること請け合いです。本作の哀れないけにえたちが警官隊というマッチョな仕事人なのもたいへんよろしい。血まみれ、欠損、拷問なんてなものは職掌柄見慣れているであろう彼等が、いざその当事者となって嬲られる様子は非常に粘質でゴア々々で、更にはその地獄に彼等を導いたものがちょっとしたオカルトでありオチへの伏線であるところなぞは、ひねたホラーファンのくすぐり方を熟知しているジャン・エヴェノルならではの……お、お前は誰じゃあ。と思ったのでGoogle様に恐る恐る伺いを立ててみたところ、自身の短編をベースに本作を撮り上げた新人監督らしいですね。今後の躍進が期待されます。ほで、この御仁の個人的な趣味なのかどうかは知る由もありませんが、<マダヤオノウョキャジ>が絡んできて肉体それも人体破壊方面に妙なフェチズムを発揮したりするのは露悪的の一言では片付けられません。またある行為を強要したり(ゲロロロロロ!)、配下が打撃で肉叩きを的確に行なう様子などはまさに美肉を嬲るバイオレンス。肉体という容れ物へのパラノイアックな何らかが、こう、丹田の下の辺りにキュッと響いてきました。その意味では本作は『マーターズ』(感想)の系譜に連なるとも言えるかも知れませんし、観れば判ると思いますが、恐らくモチーフの引用も行なっているのだなあと……グェップ満腹々々。


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『葛城事件』 - オールドタイプは機能不全家庭の夢を見るか?


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城事件
2016(2016)/日本/PG12 監督/赤堀雅秋 出演/三浦友和/南果歩/新井浩文/若葉竜也/田中麗奈/他 
俺が一体、何をした。


 場内が明るくなると同時に大喝采、「葛城!」「事件!」と観客同士のハイタッチが起きるなど、したら面白かったのだが、そんな事もなくズドーンとした余韻を引きずりつつハコから出て行く人が多数観測(当者比)された『葛城事件』。ようやく岡山でも上映開始と相成ったので観て参りました。赤堀雅秋監督の『その夜の侍』(感想)に続く舞台原作映画であり、個人的な今年の目玉映画三作の内の二作目。ちなみに一作目は『サウルの息子』(感想)で三作目はミシェル・ゴンドリーの『グッバイ、サマー』。ぜんぶ岡山映画界の生命線ことシネマ・クレール案件なので、岡山県は『ひるね姫』などという事実誤認アニメ映画に注力するよりもシネマ・クレール自体を映画化する事を打診してみたらいいと思います。モキュメンタリなのがポイントね。ほで、例によってまた枕に文字数を費やしてしまったわけですが、この『葛城事件』に関しては、言語化される以前の抽象的な印象や口をついて出てくる言葉が「アー」とか「ウー」とかも含めて止むに止まない状態で、もう本当に何から、どこから、どんな目線からどうした事をどうほざけばいいのか考え込む始末。まあ下手の考え休むに似たりとも言うので、とりあえず観了/未見の人を問わず共有しておいてもらいたいなと思うのは、これは事前に多くの人間が共通認識として薄らぼんやりと抱いていた附属池田小児童殺傷事件の映画化ではないというもの。ここが自分もまず驚いた所で、ディテールのイタダキはあるものの、換骨奪胎され独立した『葛城事件』として映画の魔の領域にちゃんと踏み込んでいる。無差別殺人シーンから逃げずそこにちゃんと尺を取っているのにも感動(そこを敢えて忌避した『ぼっちゃん』(感想)との比較意見も出てきそうなものだが)。だがその感動の主体が実行犯ではなくそれを育てた父親・葛城清(三浦友和)であるという事実と、ああいう暴君じみたオールドタイプなオヤジはそれこそゴロゴロ居た(居る)という事実がせめぎ合って、現代の視点では一筋縄では行かない家族観を考えさせるものとなっている。清の怒号と暴力でマウンティングしようとする習性や、キャッチコピーにもなっている「俺が一体、何をした」という自覚の無さ・無責任は、犯人と獄中結婚をした人権派・星野順子(田中麗奈)の最後の絶叫によって弾劾されるのだけれども、その順子ですらが、家庭愛に飢えている事を暗に仄めかし、性的に見られる事に嫌悪を示したかと思えば自傷するが如くに性的な経験談をくっちゃべり始め、意図的にか老け気味にメイクされた表情に闇が濃く見えるという始末。清にまつわる関係性は愛憎表裏一体の依存癖で占められており、親子、夫婦、兄弟、それらの齟齬すべてが、機能不全家族の行き着く先は殺人か自殺しかないという誰も口にしない事実を、コンバットナイフの異常な輝きや、捨てた煙草をやっぱり拾う仕草で示している。のみならず、役名すら無い人々を――それこそ子供から老人に至るまで、その家庭背景を想像させるように配置する作為は流石舞台作家の手に成るもの。狂を発した“親”の台詞が誰の口から出てきても不思議ではないスリリングさと実体験に基づいたアレコレから、ヒリヒリと臓物が悲鳴を上げそうになる。そして機能不全家庭のアイコンとして市民権を得た感もある食事シーン。『冷たい熱帯魚』(感想)の象徴が冷凍食品であるならば『葛城事件』のシンボルは即席麺類。パスタからカップ麺にとろろ蕎麦など、麺に対する執着は映画の最も印象的なもののひとつとして時には不和を、時には紐付けを人間関係に刻み込む程に強烈で印象的で、思わず自分も帰りにラーメン屋へと寄る始末(一人暮らしの最も印象的なもののひとつ)。まあそんな事はどうでもいいとして、被虐者が居なければ加虐者も存在できない、という観点から清の精神的・肉体的な孤独を描いていたのも本作の白眉だと感じる。ここを描いているからこそ清は怪獣にならず古い頑固親父として判断される指針が示されているわけで、即ち清が自営する金物屋――親から継ぎ、子には継がせない……子供の逃げ先を奪ったその店――唯一の清の生育環境を窺わせるヒントに、あまりに狭い視界(世界)など十重二十重の意味を観客は見て取れる。その上で“家族”の罵り合いを見るのはちょっと自分が試されているようで精神的な圧迫感がスゴイ。その抑圧、何で映画を観て抑圧されなきゃいかんのかよく分からんのだが、とにかくその抑圧を解放するというか監督の趣味というかいやいやこれは作品の文脈に沿っているのだからというか田中麗奈のサービス台詞、控え目なサービスシーンが終わりの方に用意されてあって、ああ、なっちゃんもいい感じに年取ってエロくなったなあ、なんて事を思いながら。でも同時に「人殺し」と落書きされた壁を塗り直す清の姿も連想する辺り、脳味噌がむず痒くなってしまう。


「葛城事件」サウンド・トラック「葛城事件」サウンド・トラック
窪田ミナ

TVアニメ「マクロスΔ」オリジナルサウンドトラック1 シン・ゴジラ音楽集 カレイドスター 究極の すごい サントラ

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神の子どもたちはみな死ぬる - 『サクラメント 死の楽園』


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クラメント 死の楽園
THE SACRAMENT
2015(2013)/アメリカ/R15+ 監督/タイ・ウェスト 製作/イーライ・ロス/他 出演/ジョー・スワンバーグ/AJ・ボーウェン/ケンタッカー・オードリー/エイミー・サイメッツ/ジーン・ジョーンズ/他 
「神」による
絶対の恐怖。



お父様(Father)”と呼ばれる教祖(ジーン・ジョーンズ)の御託を絶対とするキチガイカルトと、その“エデン教区”と呼ばれる生活圏に突撃取材をかました面々を描いたモキュメンタリですが、この「声がでかい人物を崇拝したがる」という集団ヒステリの一種? に既視感がありすぎて、教義の是非であるとか擬似家族の在り方であるとかそういう問答じみたところが一蹴されてしまい、いいカンジのコメディに仕上がっていたのではと感じてしまった次第。何よりも“お父様”のルックスが素晴らしい。ガイアナ人民寺院の集団自殺をモチーフにした映画で、且つその首謀者のナリカッコに表情筋を緩ませるなんてのは不謹慎であるという事は百も承知なのですが、包容力がありそうでいいですねえ、ジーン・ジョーンズ。『ノーカントリー』や『ヘイトフル・エイト』(感想)にも出演していたらしいですが、初めてそのふくよかさを意識しました。元ネタであるジム・ジョーンズに名前と体型が似ているからオファーされたのかしら、などという下衆の勘繰りも含めて抱擁してくれそうです。ほで、その腹に弾き返されるかのように外部からの取材班は悲劇のキッカケとなってしまうのですが、ここら辺のPOVがちょっとしたホラー仕立てになっており、やがて血が流されるに至っては安っぽさと引き換えに映画的なケレンを存分に発揮しています。何度も書いていますが“小さな王国”の破滅は本当に良いものです。物語内に建国されたそれは滅びるためにあると言っても過言ではない。トンチンカンな取材班や聾唖の子供や恐らくマイノリティである事に疲弊した中高年たちを集めて妄言(「米軍が攻めてくる!」など)を吐いていれば崇拝してくれるというのならば、各種掲示板にはカリスマ教祖がいっぱいです。そんな事はどうでもいいのですが、惜しむらくは信者たちや、“お父様”の表象は見えても表情がよく見えなかったところで、何を恐れ、何を求め、何を忌避し、何を探求していたのかが比較的あっさりと、事件として人口に膾炙している以上の事に踏み込まずに語られている点。資本主義や物質文明に束縛されるな、程度のフレコミをきちがいの情熱の源泉とされても、いまだ前時代的な価値観と主にインターネットで闘っている我々ジャップと致しましては得心が行きません。ここはもうちっとばかり脚色が欲しかった。自分は映画が観たいのであって、集団自殺事件を追体験したいわけではないので、あっさり実事件に沿われてもきちがいや狂信者の心中は推し量れないのです。何気なく機銃で武装している信者や、返事をしない(できない)少女といった不穏な要素が序盤に見え隠れしていただけに、そして前述の如くに血が流されるに至っては映画的な緊張度が最大限に高まるだけに、それをより芽吹かせるための水やりが今少し少なかったのかもと。とは言い条、カルトやマルチにハマる人は千差万別の苦痛や空洞、弱い所や周囲の無理解などを抱えているのであろう事は自分のさもしい想像力からでも容易に察せられますし、また、その手の人たちを、千差万別の苦痛や空洞、弱い所や周囲の無理解などを抱えていると断じてしまう観点も驕りに類する危険な目線であることも重々承知はしているつもりです。それを指して俗に「何が何やら」と言うのですが、事件史に傷痕を残す実話ベースであるという事を差し引いて、ここはひとつ「映画」であるという事実のみを鑑み、“お父様”の妄言と信者たちの妄想に統一的な方向性を与えてみると、もっと話を転がしやすくできたのではないのでしょうか。その分神経症ホラーか、爆笑コメディに寄りすぎてしまってモキュメンタリである意味が薄れてしまうような気もしますが。


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『ゴーストバスターズ』(2016) - Ghostbustersが聴こえない


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ーストバスターズ
GHOSTBUSTERS
2016(2016)/アメリカ/G 監督/ポール・フェイグ 出演/メリッサ・マッカーシー/クリステン・ウィグ/ケイト・マッキノン/レスリー・ジョーンズ/チャールズ・ダンス/マイケル・ケネス・ウィリアムズ/クリス・ヘムズワース/他 


 あー、これを観てクスリとも笑えなかった感性? 笑いの閾値? そういうのって、客観的に見てどのくらい社会性に欠けたものなのかに今すごく興味があるんですよね。自分のために。箸が転んでもおかしいトシゴロ、てな言い草もありますが、箸が転がろうが踏み絵を踏んで信仰が転ぼうが(スコセッシ『沈黙/Silence』のステマ)、笑い転げているひと、にんげんというものが一番人生を楽しんでるって考え方もわかりたくないけどわからない事も無い上、無印『ゴーストバスターズ』のレイ・パーカー・ジュニアの主題歌は子供のころよく口ずさんでいたような記憶もあるんだけど。ちなみに英語が聴き取れなくて「アアアアーアアーアー」とか歌っていて。ほで「ゴースト! バスターズ!」の所だけ威勢よく叫んだりしていて。なのでかの曲が劇中に流れた時には感慨一入、あらゆる偏差・偏見・柵・理(ことわり)を超えて、のち塩の柱と化すばかりのような顔になっていたと思うのですが、あとは終始真顔。ルッキズムを避けて巧妙な言い回しをさせていただきますと、非常にユニークでいらっしゃる4人の女性が顔突き合わせてべしゃり暮らしていようが、クリス・ヘムズワースがあざとい天然っぷりを発揮していようが自分の表情筋はピクリとも動くことなく、これが非常に息苦しい。人ならざるものが市街地に跳梁跋扈するクライマックスですら、なんですかね、焼き直しって言うと少しくお行儀が悪いので、お約束、とかテンプレート、とかもっとお行儀の悪い文言が脳内のくらやみに浮かんでは消え、浮かんでは消え。カメオ出演にも「あ、出てるんだ」とだけ。上映前に散々騒がれていたアンチ・フェミニズムとのやり取りをシニックにネタにした箇所もあるのですが、アメリカでの上映開始に伴うバッシングに耐え兼ねてTwitterのアカウントを消す決意をしたレスリー・ジョーンズの事などを加味して考えてみても、そこは笑えないというか笑っちゃいけないというか。ポリコレポリコレとかまびすしい昨今であり、世界的な流れなんでしょうけどフィクション・エンタメの世界でも性差を無くせというのは納得できる。で、そのロジックを『スター・ウォーズ』シリーズや『マッドマックス』シリーズは柔軟に取り入れて、ご存知のように大成功を果たしているって事実を踏まえた上で敢えて一言。観た人の9割くらいがホルツマンホルツマンって絶賛しているけど、一瞬腹の横肉が映った時に「にく!」と思ったくらいで既視感が払拭できない造形のキャラだよね、『スーサイド・スクワッド』が公開されたらたぶん絶賛している人の殆どがハーレイ・クインの方に行っちゃいそうだよね、と思った人もなんぼかは居ると思います。あと、ゴーストの存在を科学的に実証することに人生を賭けた人間、というのはエンタメ的に訴求力が強いものだとは分かるんですが、それを「理系女子」とか「ギーク女性」とかそういう枠だけに落とし込んでヨガるのはエンタメ的な訴求力どころか二次被害三次被害を生み出しますよね。本作のゴーストテック(仮名)はエリンの著書やトラバサミやプロトンパックやPKEメーターといった戯画的な要素にだけ集約されてあって、映画用にチューニングされた疑似科学をマジモンっぽく文脈に絡めているわけではないので、無印と同じく「バカカッコイイ~」とだけの単純な賛辞を贈る事こそが彼女らが一番報われるんじゃないかなというのはごく私的な意見ですが、本作に聴こえた「ゴースト! バスターズ!」は実はそわそわしながら観に行った自分のみに聴こえた願望による幻聴だったのかも、でもあのロゴの誕生秘話が見られたのは眼福だったなあ。なんて事を思いながら了。


「ゴーストバスターズ」オリジナル・サウンドトラック「ゴーストバスターズ」オリジナル・サウンドトラック
ヴァリアス

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私は一体誰でしょう - 『殺されたミンジュ』


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されたミンジュ
ONE ON ONE
2016(2014)/韓国/R18+ 監督/キム・ギドク 出演/マ・ドンソク/キム・ヨンミン/イ・イギョン/チョ・ドンイン/テ・オ/アン・ジヘ/チョ・ジェリョン/キム・ジュンギ/他 
少女が葬り去られた日、
良心はすべて
この世から消えた。



 90sオモロ日記を継承していきたいんだ。という信念っつーか思い込みさえあれば世の中たいがいの事は乗り越えられそうな気がします。ところで連日の暑さのせいでパソコン様がそろそろおくたばりになりそうなんですが。この夏を乗り越えられる気がしません。河原で肉焼いて、その写真を絵文字顔文字機種依存文字と共にSNSに投稿するタイプのトライブの精神をサイコジャックしているスマートフォンに頑丈さで負けている事を認めるのも癪なので、そこら辺の鬱憤を人生SOSと銘打ってツレに投書(スマートフォンで通信)してみたところ、「お前の好きな映画でも観て寝たら?」と彦龍の憲彦さんばりの回答をいただいたので、劇場で観逃していたギドクの『殺されたミンジュ』をやっとこさ観る。ミンジュが殺されたらしい。野郎、お礼参りだ! なんてクソトボケを捏造する暇があるんならさっさと内容に触れろって話ですね。ここまでで何文字費やしたよ。ほで、ミンジュ=民主≒民主主義の暗喩でありまして、てな事前情報は何となく知っていたのですが、理由がぼやかされたまま、正体もぼやかされた連中に民主が殺されて、その報復として政治色豊かな集団が殺害班を襲撃、それを観て民主主義の危うさと政局の何たるかを察せ。という内容だったら、コテコテ過ぎてギドクの社会風刺も悪い意味で我々目線に降りてきてしまっているよなあ、個人的には仙人で居て欲しかったのだけれど。などと一抹の不安を覚えつ122分みっちり観てみたら、これが理由がぼやかされたまま、正体もぼやかされた連中に民主が殺されて、その報復として政治色豊かな集団が殺害班を襲撃、それを観て民主主義の危うさと政局の何たるかを察せ。という内容であったので、猛暑の砌、この思わせぶりな喩え話と政治色の強いコスプレとヌルい拷問シーンが延々と続く本作を劇場で鑑賞なされた向きに於かれましては当時どう思われたのか伺いたい次第です。いややっぱり別に聞きたくありません。選挙やデモがあるたびに民主主義が死んでいる本邦でそれを聞こうと思うのが愚の骨頂。余談ですが「愚の骨頂」ってちょっとラーメンっぽい響きじゃないですか? 「愚の骨頂、大盛りで」「自己紹介はいいから注文してください」みたいな。まあこんな余談を差し挟む不真面目さと、民主主義がいかに殺されるに至ったか、殺害方法はどういったものであったのかすら論考しない私のごとき愚の骨頂でも選挙権も被選挙権も一応持っているので、それなりに思うところや感じるところはあって、「上層部からの指示に従っただけ」と繰り返すミンジュ殺害犯の体制側に沿った縦割りの在り方に、じゃあ責任の所在は突き詰めるとどこなのかな、と、やはりみんなが疑問に感じるような事が頭を掠めたりするわけです。つまるにそれは犯人探しをしたいという欲求で、民主主義に相対していると暗喩されているミンジュ殺害班の元締めは結局誰(何)であったのか知りたいといえば知りたい。本作のメッセージ性が一歩退いているように見えるのは、そこを明らかにしておらず、政治主張と政治主張の闘争が結局均衡も混沌も産むかも知れない、と、曖昧な地点に着地して了としてしまっている投げっぱなしが故。民主主義の滅亡を許すと大変な事になりますよ、という安易な“政治的主張”を汲み取って消費されるべき映画であるならば自分も頭のカロリーをさほど消費せずに済むのだが、これまで仙人目線から箱庭を覗くが如くに韓国を風刺してきたギドクの映画を、左様な単純な結論付けで記憶の彼方に追い遣ってしまうのは非常に勿体無い。これは牽強付会に過ぎるかも知れないが、例えばミンジュは民主主義の議論・多数決・多様な価値観の存在・自主性のうち、自主性のみを切り取って擬人化されたキャラクターであったのではないのかと思ったりもする。本作の舞台である韓国はドラスティックに政体が変わったファンタジックな韓国ではない。飽くまで民主主義下の、現在の韓国です。ギドクが一人で脚本から撮影までこなして数日間で撮った映画だからそこまで凝る余裕が無かったとも言う。だから民主主義が生きている舞台で民主主義を殺すにはまず自主性を剥奪するのが製作的にも、概念的にも手っ取り早かったのではないだろうか。抵抗することなく生存権も行使せずただ政争の具にされるミンジュに凡その自主性は見当たらない。片手間に仕上げた映画だからキャラ作りが徹底してなかったとも言う。メッセージを残さず、ただ殺されるという結果だけが必要とされていたミンジュに、繰り返すが自主性は感じられない。となると、国民主権が死にゆく場合どこから壊死が始まるか隣国に住んでいる自分の脳内にもうっすらと像が結ばれてくるわけで、ここまで計算していたならやっぱりギドク凄いわ、などと一人こぼす始末なのだが、溜息も同時にこぼれる始末。


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