観ると死にます

 

『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』 結婚という行事は女たちのバトル・ロワイアル

20120514[Mon]

[カテゴリ]映画

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ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン
BRIDESMAIDS
2012/アメリカ R15+ 監督:ポール・フェイグ 製作:ジャド・アパトー


 結婚は人生の墓場、なんてことをかしこみかしこみ既婚者が申し上げておる様子をよく見る。が、どこかその表情はうっとりと恍惚に微睡むように、ちょっと斜め上の方を見ながら申し上げてくる場合が多いようにも思え、そんなツラをして「結婚は人生の墓場で御座いまするよ〜」なんて言われても割と白々しいっつーか、そういう態度に対する適切な対処法を乃公は持ち合わせてはおらぬので、自然と、ははは、って愛想笑いで追訴免責、結婚願望が皆無である乃公はそうして適当に話題を毎回逸らすのである。
 だが、結婚は人生の墓場、なる文言については少しく考えてみるのも面白いかも知れない。結婚は人生の墓場。墓場である以上は、アンデッド、主にゾンビなどに縁(えにし)が深いと思われる。更に恍惚の表情で「結婚は人生の墓場なのねン」などと唱道する既婚者のその作家性から鑑みて、敢えてロメロや今風のやつではなくフルチ的なゾンビをわたしは想像する。結婚という人生の墓場には、走ったり思考したりするゾンビは居らぬのだ。蛆をたからせ徘徊するその姿。はは、詰まるるところ、結婚という人生の墓場には一切合切の天佑神助は無く、喰うか喰われるかのサバイバル、極限状況が繰り広げられておるのだ。斯くしてわたしは達観し、既婚者たちは死霊のいけにえなのであるとの天啓を受けた。
 そして、その高まり低まらぬまま、結婚という人生の墓場の死霊のいけにえたちを俯瞰してみて気付いた事がある。結婚という人生の墓場のゾンビ・ハザードは、結婚という人生の墓場の周囲に居る人間たちにまで波及被害を与えておるのだと……。

 結論から言うと、結婚という人生の墓場の近しい周辺に居るブライズ・メイドたちは、すでにゾンビと化した/化す予定の新郎新婦に追わるる者なのである。
 ブロマンス映画の新鋭ジャド・アパトーが手掛けた新作、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』を観ていただければ話は早いのだが、つがいになることが決まって幸せ有頂天の男女の周囲には、多種多様な思い、祝福、呪詛、などが渦巻いてぐちゃぐちゃになっており、ま〜結婚おめでと〜なんて笑顔の裏には般若が潜んでおり、ハレの舞台へと向けてほたえ騒ぐその背景には、婚姻という伝統の古怪な肌触りがぬめりと存在するのである。

 店も潰れて男には身体だけの関係を求められ仕事も上手くいかない割ともうどうしようもねえ感じの主人公アニーは、それでも親友でいてくれる幼馴染リリアンの結婚式の付添人たち、ブライズ・メイズですな、のまとめ役を依頼される。ので、ある、が、そのブライズ・メイズが一筋縄ではいかないオンナどもの集まりで、私生活が割ともうどうしようもねえ感じのアニーは、ブライズ・メイズの中でもセレブ臭くて顔面の偏差値が高くてプレゼント上手なヘレンにぎりぎりめらめらと嫉妬の炎をたぎらせてしまい、新郎新婦を出汁にみじめなプライドを炸裂させて人生の深淵を覗き込む、というお話。

 こうした心が鬱屈してしまった人を救うのは難しいが、見ている分には楽しいもので、例えるなら『ハングオーバー!』(自分の感想はこちら)テイストな文脈で話は進むのであるが、あっちが精白されたブロマンスならばこちらはおんなの情念濁り酒といった趣であり、自分の幼馴染が新しくできた友人の方に傾倒していく様子なぞ、見ていて胃がきりきりする方もおられるのではなかろうか。割ともうどうしようもねえ感じのアニーが唯一誇れるものだった親友リリアン。それをぽっと出の、明らかに自分より良い生活をしている人間に奪取されてはこれ即ちアイデンティティの危機であって、ワガのレゾンデートルに関わる問題であって、最後のプライドにまつわる難事である。

 とは言い条、現実に即して考えてみららば、あまり笑えないであろうこんな話をコメディとして成り立たせておるのは流石なる手腕と言う他は無く、リアリティのある主題をゲロやウンコネタで希釈するのは逆説的に上手いとは思う。目に見えない人間関係より目に見えるゲロやウンコに人間は注視してしまうものだからね。少なくとも僕はそうさ。

 でも、まあ、そんな深刻さにひょいひょいっと手を差し伸べてくれるのが映画の優しさで、恨み妬み嫉みから視野狭窄に陥ってしまったアニーにも、良き人間関係、救いの手じみたものが差し伸べられる。ここでアニーは蒙を啓かれて、カービン銃を持って結婚式に乱入、片っ端からぶち殺してへらへらしておるところを駆けつけた警官隊に取り押さえられる、なんて展開があったら是非観てみたいものだがそんな展開では当然なく、アニーのだらしなさから縁を持った警官や、ワガの中のやっぱり友人は大切だという根本的な思いから、どうせならみんな幸せになろうよと大団円に向けて走り出す。女性版ザック・ガリフィアナキスというか女性版タイラー・ダーデンというかそんな怪演を見せたメリッサ・マッカーシーの後押しなんかとても印象的でありました。そして、クライマックスにはある大物がサプライズ出演。ここらも『ハングオーバー!』を意識しておったのかなとへへえと口を開ける。

 結婚願望皆無だと先に書いた自分だが、友人の結婚式には出席するしその場では笑顔を作る。かなり無理をした式もあったのだがそういうことをぶつくさ言わず新郎新婦を言祝ぐ。これくらいの心意気があればどうにかなりまするよ。という教訓めいたものも感じて本作を満喫した次第。

 まあ、その友人は3ヶ月で離婚しましたが。


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『スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション』 10年経ってメタメタになったけどゴーストフェイスは元気です

20120506[Sun]

[カテゴリ]映画

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スクリーム4:ネクスト・ジェネレーション 
SCREAM 4
2011/アメリカ R15+ 監督:ウェス・クレイヴン 主演:ネーヴ・キャンベル


 支那蕎麦を食するのはいいのだが、1日ほど時間を置くと、また支那蕎麦を食したくなる。で、支那蕎麦を食し、また1日ほど時間を置くと、阿呆なのか、これまた支那蕎麦を食したくなるのである。
 これは油中毒に由来する反復で、何度も同じ店に、同じ時間帯に行く辺り、ワガがワガをトレースする完璧なる反復なりけりと堂に入っておると、何度も何度もちゅるちゅると麺を食らい、ずびずばと汁を啜るワガをどこか冷めた目で見ておるワガも存在するのであって、そんな高位のワガの視点、これをメタ視点、ちゅうん、ですか。こうしたものを拗らせると、支那蕎麦を食するだけに留まらず、何をするにも自分が阿呆のように思えてきて、人生の暗渠を行くが如き気持ちになり、胸には虚無が広がり、あらゆるものが相対化・無力化されて何をしてもちくとも楽しくなく、わあ、と絶叫すると発作的にビルの屋上から身を投げた、なんて末路は嫌だな。僕は嫌だな。
 ところがメタとハサミは使い様、なんてことを申して、反復行為のうちに頭上に生じてくるメタ視点を、こう、上手いこと、クイッとやると、勢い増して米鬼撃滅、何となくはくはくしたものになって、反復行為にメタ視点を添えて提示する、なんてこともできるのであって、色々な映画がそれをやっちゃ大受けし、それをやっちゃ白けられ、味噌と糞の分別がつき辛くなったので御座るよ。

 で、まあ、たぶん、糞ではなくて味噌の方だとは思うが、『スクリーム』シリーズは映画内映画、ホラーの法則を逆手に取る、などの小細工を散々に弄した挙句、メタ視点をシリーズに施療することに成功し、3作も出たのち10年も経って4作目を出すなど、視点がより高次へ高次へと高まり、メタ、メタメタ、メタメタメタとメタタタタなことになっておる。そんな高次元を女子高生の下履きでも覗き込むかのように下から見上げてみたのだが、はは、これは陳腐な視点しか持ち合わせぬ下郎の独り言でございますが、どことなーく、何となーく、原点回帰って言うかさ、リブートしたいんちゃうけ? と思わせるような安心感・安定感があったのだね。

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 映画内映画『スタブ』も7作目まで公開されており、もうネタ切れだからタイムスリップの要素まで取り入れちゃったよなんて会話で人を煙に巻いた矢先から、つるるるるるっ、つるるるるるっ、なんつて電話が鳴って、「お前の好きなホラー映画はなんだ?」と例のメッセージが聞こえてくる。あんた誰よ、いたずらはやめなさいよ、と定番のレスポンスを返していたら、ゴーストフェイスがだっだーんと出現、ふんふん言って犠牲者を刺し殺し、ウッズボローの連続殺人事件がまた始まりました、という導入部分からして、1〜3作目に続く反復なのだが、実はもうかなりメタ的。『SAW4』の悪口をのたまいつつ、『ファイナル・デスティネーション』みたいね! なーんて台詞を言わせてみたり、それら中堅どころのジャンル映画の名を挙げながら、敢えて80年代スラッシャーの装いを見せるという、よそ様の作品をばりばりに意識した上でのメタ。他にも大量に名作ホラーの名を列挙したり、ホラーオタクは死なないんだ!→殺す。ゲイは死なないはずだけど!→殺す。という、予断を許さない殺人は、主人公シドニー(ネーヴ・キャンベルの続投!)の主人公ゆえの身の安全を担保するものではなく、最後の最後の最後まで観客を翻弄する。大体が無茶ら苦茶らなこじつけであるからして、今回犯人を当てる、フーダニットは不可能に近いのだが、その真犯人ですらもメタにメタを重ねて挙句が結局シリーズ通しての安牌に落ち着いてしまったというところもまた良し。

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 とは言い条、時間は流れる、時代は変わる、この不可逆性に殉ずるかのように、世代的なガジェットも持ち込まれておって、殺人のネット中継やケータイ電話によるSNSなんかはその最たるもの。にも関わらず、肝心要のスラッシュ・シーンはといえばナイフでざっくり、ナイフでぐっさり、といったアナログ極まりない手法。ここら辺にウェス・クレイヴン逡巡と決断があったようにも思えるのだが、メタをメタたらしめるには変に屈託することなくして、真正面から魅せてくれようとしたのではなかろうか。だとしたらこのナイフでざっくり、ナイフでぐっさりは、ホラーファンに対する10年越しの福音である。

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 真犯人のしょうむないしょうむない動機も何のその、冒頭から「今さら続編!?」という観客の気持ちをキャラクターに代弁させるやり口や、オリジナルを改悪すんな、馬鹿野郎。といったエモーショナルが本作の、ひいてはスラッシュ映画の払暁っぽくもあり、庶人である乃公などはホラー映画の地肩の強さを再確認すると同時に、丹田の辺りに楽しさを感じてならんのである。そうした意味で本作はシャイニーであり後光に彩られており、ついでに言うとオリジナルキャストの3人の老け具合も気にならんくなるのである。例え20年後に『スクリーム5』が公開されたとしても俺は観るね。たは。


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黄金週間を低うに、低うに、時には、充実を希求して

20120503[Thu]

[カテゴリ]日記のはらわた

 世間一般では黄金週間である、ということで、即席の支那蕎麦をちゅるちゅる食したり、自由律俳句を詠んだり、天竺鼠と戯れたりしておった。すべて拙宅で出来ることではあるが、外出するのは疲れるし、何よりも人の多い場所は憎悪しか生み出さぬのでインドアライフ最高、最高、と部屋の中で万歳をし、くしゃみをし、その後、ちょっとだけ泣いた。

 わたしは今、何をしているのだ?

 5月の陽気は程好く暖かい。暖かいということはこれ行動の可能性・選択肢が増えるということで、陽気につられて桜を愛でに行ったり、暖かい内に一丁家の大掃除でもするかと発奮したりできるはずなのだ。たまに陽気に当てられて気がおかしくなってしまったような人を見るが、そうした例を斟酌することをせずに話を続けると、兎に角、暖かい内に、黄金週間内に、何かをせねば、という気持ちがワガの中に横溢しているにも関わらず、インドアライフ最高、最高、と部屋の中で万歳をするなどして無理に気持ちを禁遏しておると、早い話がノイローゼになってしまって、陽気に当てられて気がおかしくなってしまったような人と同類項で括られるのである。同列上に見做されるのである。
 わたしは、意志の力によりこれらを早急に克つ必要がある。Facebookを見れば食い物の写真ばかりであるし、ニコニコ生放送をふと見てみればネット右翼のおっさんが焦点の定まっていない目で核武装論をぶちかましておる。これらのインターネットに未練を持つことをせず、拘泥することをせず、自由闊達に、インドアライフなどという縛鎖から逃れるべきなのである。竜が沼に潜むは何のため? 時期を見て、天に昇らんがためである。

 蒙を啓かれたような気分になり、黄金週間、黄金週間、とつぶやきながら、黄金週間を如何に充実させるか、自由闊達に生きるかを模索し、惰性、惰力でお家でごろごろしておってはたましいが腐るからね。と少しくいい気になって、高島田のかつらを被り、呵々と大笑してみたのだが、これは少々自由闊達過ぎて何か違う気がしたので指針を変更、黄金週間、いいでしょう。浮き足立つ、いいでしょう。と凡下の甲乙人に思考のレベルを合わせるということを思いつき、ええとこういうことを言っておるといずれ阿修羅地獄に堕ちるような気もするが、兎に角、黄金週間に浮き足立ち、小唄を鼻ずさむなどして凡下の甲乙人の真似事を執り行い、インドアライフの縛鎖からわたしは解放されたのである。

 そしてわたしは下の甲乙人の如くに支那蕎麦屋の暖簾をくぐると、スタミナラーメンという支那蕎麦を注文し、厨房に併設されてある本棚から『ドーベルマン刑事』を持ってきて読み読み、運ばれてきた支那蕎麦をつついた。この美味さが割と恍惚っていうか、俺ら今ジャムってる? みたいな? 黄金週間の充実を希求するわたしのこころと支那蕎麦の美味さがシンクロニティを果たし、はは、ゴールデンウィークに、ラーメン屋で、ずびずばヌードルを啜っているだけ、という残酷な現実から乖離させていたのだ。でも、ちょっと涙の味付けがしょっぱくて。

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2012年4月の読書記録

20120430[Mon]

[カテゴリ]書籍

 4月病(4月病?)なのか知らんが、ひと月中ほわほわしておって映画もさほど本数を観ておらぬし、書物もさほど冊数を読んではおらぬ体たらく。
 じゃ、今月の読書記録。

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伊藤 計劃 岡和田 晃

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夜明けのヴァンパイア (ハヤカワ文庫NV)夜明けのヴァンパイア (ハヤカワ文庫NV)
アン ライス 田村 隆一

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バイ貝バイ貝
町田 康

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美しいアナベル・リイ (新潮文庫)美しいアナベル・リイ (新潮文庫)
大江 健三郎

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水魑の如き沈むもの (ミステリー・リーグ)水魑の如き沈むもの (ミステリー・リーグ)
三津田 信三

原書房 2009-12-07
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火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョン・ディクスン・カー 加賀山 卓朗

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不道徳教育講座不道徳教育講座
三島 由紀夫

角川書店 1995-04
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デッドクルージング (宝島社文庫)デッドクルージング (宝島社文庫)
深町 秋生

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 8冊。読むペースが鈍ってきたぞううむ……。

『八日目の蝉』 優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした

20120427[Fri]

[カテゴリ]映画

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八日目の蝉 
2011/日本 G 監督:成島出 原作:角田光代 『八日目の蝉』


 過日、友人が住まうマンションに、夜半、唐突に官憲が訪れたという話を聞いた。
 とは言い条、その友人が人殺しをしたのがばれたり、脱税をしていたのがばれたり、夜な夜な黒魔術の儀式を執り行っていたのがばれたりしたというわけではなく、官憲曰く、隣の部屋で児童虐待の疑惑があるのだが、何か存ぜぬか? という話であったらしい。一向に存ぜぬが、確かに変わった隣人ではありますな、と言って官憲にはお引き取りいただいたものの、思い返してみるに隣家は、挨拶をしない、夜更けに悲鳴が聞こえる、友達が来ているのを見たことが無い、等々、胡散臭い節はあったらしく、それから友人は公徳心に照らし合わせ、それとなく隣家を観察するようになったとのことである。

 虐待は習い性とは言えど、自分が虐待されたからじゃあ自分の子供を打擲していいのかというとそんなことは無く、そういうことをする人間は悪鬼、羅刹、鬼畜、外道、冷血、人面獣心などと蔑まれ、程度によっては司法の手に委ねられる。然しく、こうした事件が顕在化してきたのもごく最近のことで、乃公の幼少時などは、目に付かぬ所でもっと、意図する/しないに関わらず野放図な虐待が繰り広げられておったようにも思う。

 閑話休題。
 日本アカデミー賞をぺろりと平らげたという、いやだからどうしたのという話ではあるが、ちまたを色々と賑やかしておった『八日目の蝉』を今ごろ観た。

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 小豆島のロケーションがご当地宣伝っぽく冗長であるとか、原作を端折った結果よくある再生譚に落ち着いてしまっているであるとか、映画として稚拙な部分は多々見受けられるものの、そういうことを平然と言い放ち、へらへら笑っておるだけではこれ人格・人品などを疑われ、良識ある映画見たち諸賢から悪鬼、羅刹、鬼畜、外道、冷血、人面獣心などと蔑まれ、程度によっては閻魔様の手に委ねられる。そうした地獄の責め苦を忌避、ヤコブの階段を駆け登るべく本作を語るには、これはもう、畏れかしこみながら語る以外に方法は無く、わたしはマンボ・ズボンのチャックをキュッと閉めたのである。

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 愛憎の果てに不倫相手の子供を誘拐してしまった幸薄き女、希和子。彼女は逃げるようにして、というか実際に逃げておるのだが、転々と放浪を繰り返し、友人宅、宗教施設、離島、などに身を寄せつつ、一方的な愛情を誘拐した娘――薫に込めるのであるが、血は繋がっていないとは言えど親、しかも誘拐犯の都合で振り回される薫のことを鑑みるに、わたしは最初に書いた児童虐待疑惑のことが脳裏を掠めて痛いのである。多感な時期、人格形成期を宗教施設や離れ島で隠れるようにして過ごさねばならなかった薫の気持ちは如何様なものであったのか。ええと黙っていて申し訳無いのだが、実はわたしは原作を先に読んでおって、そこら辺の希和子と薫のこころの機微は一応知っており、情緒纏綿、サスペンシヴな部分は脳内で補完させつつ観るということをしていたので、割りと無表情な感じで、答え合わせをするような感じであり、何だか本作を観ること自体が自己目的化しておったような気がしないでもない。

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 要するに、おんな、という性のエゴイスティックな物語なのである。子宮でものを考えた結果の悲劇なのである。
 いくら愛憎があってそこに同情の余地はあろうとも、我が朝は法治国家である。誘拐や虐待はいけません。かと言って、終戦後の食糧難の時代に闇米を絶対に食わぬという主義を貫いて栄養失調で亡くなられた判事があったが、このように厳格に、四角四面に法の中で生きよというのもまた、難しい話である。
 で、まあ、闇米を食わずに死んだ判事のことよりも今は映画の話をしておるのであって、この散々連れ回された薫が、ですよ。成長して、不倫相手の子供を妊娠してしまい、かつての逃亡生活を辿る旅路に就く、というところで二幕目の開催と相成る。
 ここで徹底されておるのは「男」の描き方で、本作に関しては、「男」は書き割りであり舞台装置であり、人格としてはもう典型的な駄目男としてのパーソナリティを付与されている「だけ」である。物語の最初から、悪いのは不倫をした男、女は被害者、女が物語の主権者、というような描写がされており、えっでも不倫って男1人じゃ出来ないでしょうなどと突っ込むのは野暮天の極みであり、定食屋でおしぼりで顔を拭くが如きの駄目男感覚を醸し出してしまう。本作に介入できるのは「女」だけであり、アニムス鍛えて出直して来やがれ、この野郎! てなもんである。

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 幼児期の逃亡生活の影を引きずり、実の親とも上手く関係を築けずに空虚を抱えたまま生きている薫。そして薫に接触してくる千草という女。この千草を小池栄子が演じておるのだが、永作博美よりも井上真央よりも断然演技が良かった(大仰だったとも言う)と思うのはわたしの目が腐っているのであろうから仕方がないとして、さて、自分のルーツを巡るか、という段階になった途端こうしたサポート役が出てくる辺りにやや性善性じみたものを感じ、わたしは目だけでなく心までも腐っておるのだなと呵々と嗤い、刎! と気合いを入れると正拳突きをひとつ放ち、鬱を散じてみたのだが、それ以上に井上真央演じる薫が鬱々愚痴々々としておるので、本当、小池栄子の存在が無かったらみどろ沼のような映画になっていたと僕は思うな。

 如何にひしひしとした文脈であろうとも、結局、誰が悪い、貴様が悪い、という話ではなく、が故に再生譚として容易に位置付けられる作品であるとは思う。むしろ、すべてお前のせいだ、殺してやる。とならず、ワガの再生へと向かう様子は前向きであろうし、ポジティブなものと捉えて良かろう。で、この場合の「再生」は再び生まれる子供にかかっておって、命の接ぎ穂というか、女性にしか書き得ないお話であるなぁとつくづく思うのであった。


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今夜、久しぶりにネットラジオを決行いたします

20120423[Mon]

[カテゴリ]告知
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 告知をすることなくちょこちょことネットラジオはやってきたのであるが、こうして公式にブログに告知を打ってネットラジオをするのはだいたい2年ぶりである。2年ぶりであるというのに乃公ときたら余熱に鼻をずるずる言わせながらの病み上がり、地面を見れば腐れ落ちたどくだみの花に、空を見あげればまったく希望を感じない灰色の空、といったダウナーな気持ちで、政治、宗教、野球、なんてことはまったく語るつもりはないが、とりあえずだらだらとネットラジオを放送する予定であります。

 放送は本日21時ごろからの予定。始まりましたらこちらにラジオと掲示板のURLを貼ります。それでは期待せずにお待ち下さいな。ハックション!

放送中! → http://www.ladio.net/src/dHe2
ご意見や感想は気さくに掲示板か、Twitterまでどうぞ!
 


放送は終了いたしました。リスナーの皆様ありがとうございました。


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『バトルシップ』 ユニバーサル100周年記念は海戦ゲームでどうですか

20120418[Wed]

[カテゴリ]映画

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バトルシップ
BATTLESHIP
2012/アメリカ G 監督:ピーター・バーグ


 傍目八目などと申して傍観者の方が、当事者よりも適切な見通し・判断を下せる、なんてなことを言うが、はは、これは中々に本質を突いた言葉で、わたしもついカッとなりかけたときには、傍目八目、傍目八目、と、ぼそぼそつぶやいて頭を冷却し、おかめうどんを食して正気を保つなどして、適切な見通し・判断を下せるように心がけておるのであるが、しかし、これは絵に描いたようには上手くは行かない。就中、ゲームなどしておるときには傍目八目の信念もどこやら、たりゃりゃりゃりゃ、あぱぱぱぱ、黄泉の国に蹴落としたるわい、われぇ、と、まあ、傍から見ると気がおかしくなってしまった人のようになってしまうわけだが、そうしてわたしの気をおかしくしてしまったゲームのひとつに、海戦ゲームというものがある。これはわたしが中等学校に入学したばかりのころの英語の授業、外人の先生の発案で初めてやらされたのであるが、どうにも単調で盛り上がりに欠ける。なので、勝手にルールを改竄し、戦術核、波動砲、神風特攻というシステムを取り入れてみたところ非常にウケが良く、それをば我の発案なりと有頂天になっておったところ教師の拳骨を受けた。傍目八目の精神を忘れておった結果である。視野狭窄とも言う。まあそんないい面の皮の話はどうでもよくて、その海戦ゲームの映画化が、今回ご紹介したい『バトルシップ』である。ユニバーサル100周年記念に海戦ゲームを映画化するというのにも驚いたが、ディズニー生誕110周年記念の『ジョン・カーター』も公開されておるし、タイタニック号沈没100周年記念ということで『タイタニック 3D』(自分の感想はこちら)も公開中であるし、カ〜ニバル、フェスティバ〜ル、何だか目出度い気持ちで、小唄のひとつでも唄いたくなるね。

 さて、傍目八目の観点から言うと本作『バトルシップ』は非常に出鱈目な映画である。で、ある、が、その出鱈目具合が非常に消化が良く、悪く言えば観た後に何も残らない、良く言えば観た後に脳味噌のリソースを割かれずに済む、と、人間の知性を全否定するかの如き出来であって、観終えた後の感想が、「はは、浅野忠信が演技をしていたよ。ははは、浅野忠信役しかできない浅野忠信が演技をしていたよ。はははは」であったことからも察していただきたい。

 とは言い条、そこで鼻を鳴らしじゃあ観るのやーめた、なんてのは短絡/短慮の極みであって、それはハムスター並の思考力であるとわたしは考える。少しく考えてもみよう、ユニバーサル100周年記念である。海戦ゲームの映画化である。浅野忠信が演技をしておるのである。こうした要素がぶちまかった映画を鹿十できるほど尊公は偉いのか? 本当は死して屍誰も拾ってくれんような映画盆暗とちゃうんけ? もうちょい自由闊達に生きるが楽よ、本能のままに生きるが楽よ、ほほ……なんつっても、本能のままに殺戮、略奪などをされても困るが、ちょいと気になるくらいだったら観た方がいい。それが映画見の本然というものでありましょう。

 内容はというと、テイラー・キッチュと浅野忠信のブロマンス然としたやり取りから、退役軍人、伝説のお爺ちゃんズまでをもさして厚くもないドラマに盛り込んだごった煮感。ではあるが、やっていることは宇宙人が張ったバリア内に取り残された三隻の駆逐艦と、宇宙人の旗艦によるドンパチであり、しかも宇宙人側はレーザーなどを使わず実弾兵器オンリーであるので派手な爆発がドッカンドッカンと繰り広げられ、合間々々にバグみたいな回転兵器までをも差し挟んだいつものアメリカンマッチョな戦争オペラ。しかも宇宙人側は、観ても結局意味が分からなかったのだが、専守防衛的な思想を持っておるらしくレーダーを当てて「敵意」の無いものには攻撃をしないという設定。その割には、建築物や何やかんやをぶち壊しておったのだが、それを観て日本人であるわたしは何となく寺社の方角へと頭を垂れたくなった。

 兎に角大味なのである。タイトルでもある「Battle Ship」の意味が明かされるのはクライマックスになってからなのだが、まあそこが見せ場と言えば見せ場であり、突っ込みどころと言えば突っ込みどころであり、映画として一番盛り上がるシーンにも突っ込みどころを入れてくる辺り、流石、「『バトルシップ』は決して荒唐無稽な映画じゃないんだ」とうそぶいたピーター・バーグの丹田の辺りの底力を見たというか、「何で太陽光に弱い宇宙人がハワイに侵略に来るんですか?」なんて訊いちゃいけないような雰囲気すら漂わせておる。

 インダストリアル・デザインなんかは中々良いし、なまじ空を飛んだりなんかせず魚みたいにぴょんぴょん飛び跳ねる宇宙人の旗艦なんかは迫力があった。宇宙人が装着しておるスーツもテカっていてかっこいいし、テカりものは正義、ではないが、これはミリタリマニアというよりも小中学生に目配せをしておるようにも感じる。主要キャラがほとんど死んでいないというのも含め。でも実は何万人も被害が出ています! という「画面外情報」で説明のほとんどを済ませるところなんかも教育上非常によろしいと思うので、傍目八目、傍から見た宇宙人侵略の感想はこれにて了とさせていただきます。


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